鳥インフルエンザ問題の今後(207)



元が中米のワクチン株であろうとなかろうと、確実に自己増殖を繰り返したH5N2茨城株は、立派な野外弱毒株である。これに闇ワクの嫌疑を掛けたところで何の意味もなければ解決にもならない。それが実際はどうなっているのかだけが問題である。あまり専門的に考えなくてもウイルスが県境を出ないなどと不自然な事をする筈はなく、症状も出さない弱毒株が殺処分で絶滅させられる訳もない。ペンシルバニアのように強毒変異するものだったらとっくに姿を現している。

感染研ははっきりプライマーの選択によりPCRで茨城株は検出出来ると云っている。
清浄国論は、言い換えれば《見ざるもの清し論》である。ことさら恣意的と云わぬまでも、その範疇でのサーベイランスでもあり、おのずから限界がある。92/40/EECに替わる2005/94/EECに準拠すれば、弱毒株も放置しておく訳には行かず所在が明らかになればワクチンで対処するよりない。それにはDIVAが要求されるが、我が国の小委員会は、ワクチンはもとよりDIVAの技術も認めていない。従ってPCR法を併用して摘発を強めれば、切りの無い殺戮につながってしまう。さすがに茨城型如きにこれ以上の殺処分を続ければ國としても困ることになる。それであえて積極的に見つけようとしないだけの話である。

ただどこかで鶏からでも見つかってしまえば茨城と同じことになる。そしてそれは大有りの話である。そのさい野外毒では《清浄国論》の手前困る、だからあくまで茨城株は<闇ワク>として取って置きたいのだ。それが大槻教授の「闇ワクチン蔓延論」の骨子である。こうやって巧妙に手回しして置くことによって、大衆のリテラシーは劣化させられてしまう、と我々は考える。

繰り返すように、ウインドウレス鶏舎にわずかなウイルスが入ることで飛沫核感染を起こしてしまうようなものはその時点でワクチンではない。それなのに小委員会の苦し紛れの言い訳をまともにとって逆転のホームランにしてしまったのは養鶏協会を含めてである。そればかりでない。別件逮捕に等しい手法で逮捕者を出され、その求刑が出た時点で、まるで合わせるかのように、改めて「闇ワク蔓延説」を出す。これではあたまから茨城は闇ワクだったんだと信じてしまう人がいて当然だし、これからも発見されるたびに<前科>がつきまとって本当の対策が取れないままになるだろう。

一方で宮崎、岡山のH5N1のほうはSARSの時のような隠れたスーパーキャリアでも居ない限り、唐土の鳥が別々に飛来して、それぞれの小動物が同時季に鶏舎内に持ち込んだとするのも、共通要素がなくて水平感染したというのも腑に落ちない。かなり広い環境のウイルス汚染があるとみるのが自然だが、それが見つからないのは見つからないだけだ。養鶏場はあとでまたNHKなどにいろいろ云われぬよう、養鶏関係の集会などは断るべきだと思う。その点でも、まだ養鶏場の防御は隙だらけと農業新聞で説いている大槻教授ご自身が過日、強毒発症の最中に京都に養鶏人を集めてセミナーを開くとは何事か、という怒りの声も聞く。当分はあまり出掛けずに自分の鶏舎の夜回り夜回りである。

H 19 2 24. I,SHINOHARA.