養鶏現場が今のように無視されたり馬鹿にされるようになったのは企業的経営が台頭してからである。餌は餌屋、病気は獣医などと分離してしまって何にでも首を突っ込む百姓型ではなくなった。百姓というのは馬鹿では出来ない、上は天文下は地理というけれど、鶏に関しては、育種、疾病、飼料、飼養管理 すべて掌中になくてはならないと云われ心掛けたものである。そんなことを思い返して、国が動いてくれぬ以上は、もうやめることは決めてあるのだから死中に活を求めて、少し対策を考えて見ろと息子達に云って居る。 つまり昔風に考えて見る。 ここへ来ての大槻先生は政府との間で右顧左眄されているようで心もとないが、我々が現場で利用しようとするときその独自で貴重な疫学調査は野外の体験と重ねて大いに活用しなくてはならない。 アメリカでB1が効かない内蔵型NDが紹介されているが、一方の雄IBのほうは変異株が多くワクチン接種も混乱している。わが家では流行当時、野外毒を採取(気管内滲出物)して生理的食塩水に溶かして冷凍保存し、実験室内で攻撃試験して確かめていたので77年のEDSV迷入問題が起こるまではデュファーのH120、以後は日生研のON株一本で来て、何ら問題を生じたことはない。むしろ腎炎型などワクチンを切り替えて居たところに問題が起きている感じである。 南中国でH9N2に感染している群はH5N1に不顕性感染を示し、糞へのウイルス排出も3カ月位押さえられるとした、数年前の獣医衛生学会の報告は、わが家での当時のIB攻撃試験の結果(この場合は臨床症状)と一致している。 それと大槻教授の指摘されたHINIのヒトとの互換性、これは既に我が国でも同定されている1996年の岩手、鹿児島のH3N2とヒトのホンコン風邪との間でも言えること、実際PPQC加藤先生の指摘されている通り、それ以後、変な呼吸器病が特に育成業者の間で問題にされていた事実もあり、数年前から大槻先生ご指摘の通り、全アジアが汚染され日本だけその埒外にあることは考えられぬのに、今回は清浄国の旗振りをされている感じで、たとえ本意でないにせよ誠に解せぬ感じを持ったもの。 加藤先生とは直接関係ないが、昔、上野製薬でナイドラフュールの粉剤を呼吸器病予防で出したとき、その乾収作用から、むしろ効能書きにないバタリー病(ブドウ球菌、Cパーフォリンゲンス)によく効くと報告したことがある。これは余談。 そんな訳で、我が国にはもう、H1N1,H3N2など塩基配列は変化しても基本的に同じ形で人と鶏などの間を行き来しているのかもしれず、事実人間の医者の間でもインフルエンザウイルスが夏場どこへ消えてしまうのか謎だっただけに、そうでも考えないと、よぼよぼの老人よりもトラやヒョウのほうが弱い理由が見つからない。 昔、椿原先生には否定されたが、NDだってH抗原を持っている。喜田教授ほどでなくてもイタリアを初めHの交差免疫をみとめているのは少なかったが前記の南中国の例やアメリカでのH5,H7に対するHINIワクチン使用例など最近はそっちの研究が進んでいる。ひょっとするとAIにもNDLVB1が効くかもしれないと言ったら息子達は喜んだ。例へ学者が否定しても現場で活を見出したことは度々有った筈だ。試して見たらどうだろうか。 我が国の学者は相変わらず、ワクチンを使うとウイルスが変異して危険だという。しかしアジアの状況、そこに置かれた我が国のこれまでの経緯から、いまさら外国のものがストレートで来るより、ワクチンを使わなくても、さまざまな免疫を迂回して変異するであろうことは人間の医者でも指摘している。 いいかげんにワクチン危険説をすてて現実的になれないものか。 H16 2 21 I,S |