鳥インフルエンザ問題の今後(201)



例年、此の時季になると、どの地方の養鶏場も、冬季の産卵低下に悩まされることが多い。一昨年の茨城では、これを追求して行った結果が思いもかけぬ大事件につながった。産卵の低下は万病の元である。治療方法を持たない養鶏場としては採算の為には早期淘汰以外の選択肢はなく、これがまた鶏病の流行を未然に防いで来た事実は否めない。この原則を忘れ、責任を飼料や搬入ヒナに求めようとやっきになって手遅れになる場合が多いことは心すべきである。

茨城のような中米株のH5N2による被害は、他の近隣国では認められないとするのは公式情報の範囲であって、実際には、香港も中国もこの株のワクチンを使って居るし、その中国では茨城事例より数年も前から不良闇ワクの噂が絶えなかったくらいだから、誰もが本音では隣国からの野鳥などが怪しいと睨んでいて、それらの情報からも、このHPでも国内での闇ワク説に抗議を繰り返して来たのである。そのように実際は一番存在するであろうH5N2あたりが、公式情報ではすっぽり抜け落ちて居て、あるのは1983年から84年にかけてのペンシルバニアの1600万羽に及ぶ淘汰の話ばかりで、それが典型的なLPAIからHPAIへの変異の形だったところから一部の学者達によってその脅威をあおられて茨城は大被害を被った。

確かにH5N2はHPAIとしても、そのペンシルバニア以外に1994年のメキシコ、1997〜98年のイタリアなどで強毒発症の事例があり、過去には恐れられた亜型ではあるものの、ワクチン株としても中米でのエンデミックとしても永く存在し、すっかりマイルド化された存在である。その中心であるメキシコが同じワクチンを永年使い続けて、少なくともHPAIの発生を完全に防いで居る反面、野外毒が変異を続けて居ることと、我が国の人型ワクチンのように80%までも組成を変えて野外毒に適応させようとすることの間に、はたしてどのくらいの実効の差があるのかと思う。

すでに動衛研の調査でもそうだが、こんどの福井の例でも、感染研あたりがご自慢のプライマーを駆使してのPCRなどで臨み、直接の野鳥調査でもやればドイツ辺りの調査結果と同じようになることは当たり前で、そうなって初めて、環境中から発見されないことで日本の状態を訝っている諸外国も納得するところとなるだろう。ただ、やはり我が国のAI対策はすべて「清浄国論」の旗の下に動いて居て良きにつけ悪しきにつけ、それによって農業生産者は庇護され消費者は安心感を得て居る。國も行政も学者も業界団体も、実は公的情報以外の事実も大部分は知って居るのであるが、そこが難しいところだ。「清浄国論」は文字通りもろ刃の剣であり、ないものはないとして居るうちはいいのだが、ないとされているものがあったとなると茨城のように酷い目に遭う。その時は公的事実として認められて居るもの以外は一切考慮されない。動研の調査がどうのこうのと云っても無駄であり、公式情報以外は一顧だにされない事も分かった。

だからわれわれ現場は逆に、ないと云われて居るものでも情報によっては有るものとして対策を講じていく必要がある。基本的に清浄国としては病気が出ては困るのであり、環境中に見つからなければ、例え感染源がそこに隠れて居ても清浄であるとの公の認識自体は変わらない。そんな時、鶏が発症すれば、運び屋がすぐ近くのネズミだとしても「見ざるものは清し」の譬えで、犯人は遠来の<唐土の鳥>などとされる。茨城の時はその<唐土の鳥>さえ消去され、グアテマラの<闇ワク>とされたばかりだ。そして鶏は残らず淘汰されてしまった。手遅れにならぬ早期淘汰はコンプライアンスにも通じると信じる。

H 19 2 17. I,SHINOHARA.