鳥インフルエンザ問題の今後(200)



養鶏現場からの発信も第2シリーズで(200)を迎えた。
繰り返し訴えて居ることは、よろず鶏呼吸器病に対しては、過去のニューカッスル病猖獗時の体験に鑑みて
(1)夜間の観察による初発の鶏の喘鳴音の聞き分け。
(2)即時の摘発と飛沫核感染を防ぐための鶏舎の解放。競合排除の為の先回りワクチンの噴霧。
の二つを基本として、空気感染が避けられぬウインドウレスの場合は、止むを得ぬ繰り上げ淘汰。又は逆の囲い込みなど、過去の現場での対応は、コンプライアンス重視のAI対策の場合でも、実際はそれとは知らぬ形で応用され鎮圧に成功してきた歴史があるように思える。特に病原体の鶏舎内持ち込みの主犯は野ネズミ、畑ネズミを置いて考えられぬこと、その場合もネズミそのものの感受性よりも、むしろ外部付着を重視すべきであることを繰り返し訴えて来たが、換気の重要性と共に、ようやくそちらへ関心が向いて来たことにやれやれと思って居る。

ただここに来て重大な懸念がある。韓国の例を引くまでもなく、強毒型の押さえ込みにやっきになっている間にH9N2のような弱毒型の浸潤を許してしまうことである。茨城H5N2が存在し、それとは別のH5亜型が2、3存在したことは事実上明らかになって居る。それが600万羽近い淘汰によって根絶やしにされたというのは妄想に過ぎない。実際発症を見てさえも、ウイルス発見の困難さはよく聞くところであるし、清浄国論という大前提が有る限り、逆にドイツと同じような野外調査は望むべくもない。

EUも認めるDIVAは有効な手段である。ただ弱毒H5N2でさえも高病原性と規定する我が国では使えない技術であるというだけだ。リングワクチンにしても、外から飛び込んで来るウイルスに対して抵抗力を持たせるワクチン本来の意味は全く無しに、飛んで来る火の粉を閉じ込めようとする、全く意味のない使い方に終始するのであれば賛成の仕様がない。それでは我が国自慢の豚コレラ対策から一歩も出ることはない。

関東地方の現実に眼を向ければ、インフルエンザも流行の基準値1、0を大幅に越えて2、4程度に上がって来た。豚の呼吸器病も多かった。こういう時季は鶏の風邪症状も多いのである。決して暖冬にごまかされてはならない。

それが鳥インフルエンザであるなしに拘わらず鶏飼いにとって、それに伴う産卵低下は経営上大きな痛手となる。茨城株などとうの昔に絶滅出来たと信じ切って居る養鶏家としては、そのような症状に出くわした場合は、茨城の例と同じように、そのヒナを搬入した育成業者や孵卵場、飼料メーカーに疑いの眼を向けその原因を執拗に追求するだろう。その結果あらぬところから、思いもかけぬ結果が知らされたりする。

1996年、岩手と鹿児島のブロイラーでの弱毒型発症例で現地の獣医さんが書いておられるが、見方によっては神経型のニューカッスルや最近はやりのSHSのような症状らしい。1997年の家衛試の調査ではH3とH1の浸潤は東北以西全国的に見られたとある。人間の場合も余程発症と合わせなければウイルスを見つけるのは大変で、良く云われるように季節外はどこにいるのか見当もつかぬという。いわんや清浄国の旗の元での鶏の場合においておやである。見つからないから居ないということではないと容易に想像出来そうだ。

H 19 2 15. I,SHINOHARA.