鳥インフルエンザ問題の今後(195)



3年前の79年振りの強毒鳥インフルエンザ発生時。浅田農産を含め発生は公的には4件とされたが実際は闇増羽に隠れて居た鶏3000万羽位が減ったろうと囁かれた。心ある養鶏家は夜中にウインドレス鶏舎内を見回ってわずかな異常呼吸音を聞き付けては即座に淘汰した。あちこちで大型鶏舎が空になり解雇された従業員が見えたりした、とこのホームページにも書いて居る。そんな噂が2チャンネルを賑わしていた頃だ。少なくともその頃はまだ昔の鶏飼いの習性が残って居た。鳥小屋には人の足跡が多ければ多いほど成功する。鶏の異常を如何に早く察知するかが勝負だった(なかにはセンサーだけをにらんで居る鶏飼いでない先進的養鶏家もいたろうが。)

それがたった3年で、法の規制が加わってガラリと様変わりした。病性鑑定も受けずに淘汰してしまうと証拠隠滅のように云われ出したのだ。鶏の病気の摘発淘汰にはその度合いを決める正確な類症鑑別が必要だが、それは決して獣医師の診断によるのではなく、あくまでがプロである管理者の日常の勘であり診断によるのではない。鶏の場合は1羽にもたもたして居ると忽ち数羽になり数十羽になって手が付けられなくなる。それが数十羽で届け出たとは異常に早い処置だとほめられるようになった。浅田農産事件が基準になったのだ。浅田の社長が必死に消毒している画面をみていて仲間の一人が舌打ちした。「無駄なことやらないで何故2〜3羽のうちに全部淘汰してしまわないんだ」

ニューカッスル病猖獗時、消毒はあまり効果がなかった。生ワクを緊急噴霧するようになると消毒は邪魔にさえなった。競合させる肝心のワクチンウイルスが死んで仕舞う。初発の鶏を淘汰して、後はウイルスを薄くするために鶏舎囲いを取り去った。繰り返すが人のインフルエンザ対策と同じである。水樋がガンだったので鶏舎はなるべく短くした。後にはウォーターピックとなりその問題は解決する。

大型養鶏には管理獣医師がいて類症鑑別や病性鑑定を行い、交通事故並に現状を残して家保に連絡し診断を受けることが義務のようにされてしまうと、本当の初期対策は出来なくなりコンプライアンスと初期消火のはざまで現場は迷うことになる。初期の1〜2羽の病鶏の摘発は庭先養鶏でも大羽数ウインドウレスでも呼吸器病に関しては変わらない。夜中に異常呼吸音を聞くだけだ。それがCRDかIBかNDか、管理記録から症状をみて即座に判断するのが現場の勘である。それによって淘汰の大きさを決める。ウインドウレスの場合は繰り上げ淘汰になる場合もあっただろう。

とにかく浅田農産事件以来、現場に研究者やお上の意見、指導が入るようになり、単純なこれまでのやりかたが出来無くなった感じでやたらややこしくなった。初発をつかんで淘汰するという一番重要で普通のやりかたが、違法ではないにせよ脱法に見られかねなくなってきた。しかし治療薬の使えない、鶏の感染症対策は人間のガンの場合と同じである。何十万羽飼おうと初発の一羽の発見がすべてで、それを摘発したにもかかわらず同一鶏舎内に転移を見たら例え数羽でもその小屋はアウト。更に別の鶏舎に飛ぶようだと数は少なくても、もう立派な第4期で鶏の場合回復の可能性はゼロである。

所詮は発病すれば治す事なく淘汰して仕舞う鶏の病気には、もともと類症鑑別は現場の判断、病性鑑定も後々の為にのみ必要なだけで鳥インフルエンザの記録なんか残すと、早期淘汰が折角うまくいって、あとは何でもないほかの鶏まで処分されてしまうからという声も有る。今回はともかく3年前のガセネタもまんざらウソでもない部分が大有りで、それに比較してこれからどうなるのかは、しばらく経たないと外からでは分からない。 

H 19 2 6. I,SHINOHARA.