鳥インフルエンザ問題の今後(191)



大方の予想通り鳥インフルエンザの発生はポツリポツリと、矢張り人のばあいと同じような拡がり方をみせている。1925〜26年にアメリカと同時期発生したA−Japan株(H7N7)は奈良、千葉、東京に発生をみたが100%の斃死率のため拡がり難いという神話が生まれた。この時も攻撃試験では潜伏期もないような甚急性の経過で試験鶏は全部死亡しているのは今回と同様である。ただいかんせん当時とは鶏の飼育密度が違う。これはどうとも為し難い。問題は当時のように集団養鶏などない時代でもウイルスはアメリカから公式情報だけでも日本のそれぞれ離れた3カ所に飛び火していることである。いかなる消毒よりも鶏の密度が問題である。当時の状況と現代とは比較にならない。

今回の発生でブロイラーの場合どうするかが問題になってきた。肉用鶏がインフルエンザにやられにくいというのは何の根拠もない。私達は独自にND中心に3回のワクチンスプレーを重ねて居るから幾分競合排除出来るだろうと踏んでいたが、無論学者達は認めていない。ただあまり根拠の無い誘発などを恐れて、それを省いて仕舞うとイタリアのようなはめに陥りかねない。

國の《清浄国論》に一番頼って来たのがブロイラー業界である。何の障壁も無しにどんどん輸入されたら産業はなりたたない。農水省は出荷時にアジュバントなどが残ることをワクチン禁止の表向きの理由にしているが、技術的には外国のように首筋にうつことで解決出来る。だからそれが理由ではない。やはり貿易問題である。したがって今後もその業界からワクチン要求が出て来ることは考えにくい。それだけに日本一の児湯のお膝下の事態で深刻である。

体だけは大きいが肉用鶏はニューカッスル病にもヘモフィルスにも弱い。それを調査対象から除いているのは官民協力の事なかれ主義の現れである。

1925年の時もワクチンは,直ぐ検討された。1971年、馬の同じH7N7の発症では、政治的判断で直ぐ全国の競走馬6782頭に輸入それに急造のワクチンが接種された。認可はなんと翌年である。当時の農相は赤城宗徳か倉石忠雄か。鶏どころか同じ哺乳類の馬に以後毎年打たれたH7ワクチンが,人間に悪影響を及ぼしたことは皆無だ。このことからも今、研究者達の言っているワクチン危険論は本当は根拠が無い。要するに、自分たちの研究費欲しさに國の清浄国論に賛成している意味しかないと一部に声があるのは尤もである。研究者達が一番恐れるワクチンに隠れた強毒株の潜在流行(サイレントエピデミック)など茨城株、H9株、そのほか動研でつかんでいるもろもろの野外株の隠れた存在は、改めてワクチン株でなくても、もうどこででも起こる問題で、事実上過去の遺物としての論拠に過ぎない。こんなごまかしをどこまで続ける気か。

もう養鶏界も、今のマニュアルでは感染を防げないこと察するべきだ。カプアさんは最初から鶏の密度を減らすべきだと言っているが、日本では如何にして一企業で500万羽飼うべきかとか養鶏は全くリスクのない仕事だとか養鶏家自身が語って居る(鶏卵肉情報)。そんなのを聞くと、此の際不見識だが、すこし懲りることも必要かとも思う。

H 19 1 30. I,SHINOHARA.
No.25253