鳥インフルエンザ問題の今後(190)



スペインカゼと時を同じくした1918年ショウプが ブタインフルエンザを発見したとある。その有名な実験で、彼はブタインフルエンザはウイルスとインフルエンザ菌(ヘモフィルスインフルエンゼ)が共に存在しないと発病しないことを突き止めた。菌は豚とミミズの間を往復していたとか。人間の場合、季節外のウイルスが何処に隠れて仕舞うかは未だに分かっていないが一説には季節によって北、南半球を往復しているとある。鳥インフルエンザもそのうちそんな形をとるようになるのか。そんな、見方によっては気宇壮大ともいえる行動を取るインフルエンザウイルスを相手に、火の粉一つを捉えて、封じ込めとか根絶とか言っても無理なことは当たり前の話かも知れない。

それはともかく今回の京都市で開かれた鳥インフルエンザシンポジュウムに対して批判が集中している。強毒鳥インフルエンザが発生している最中に、こともあろうに養鶏関係者を400人も集めるとは正気の沙汰ではないというのである。一昨年の森屋英竜氏の葬儀には皆、着替えを持って参列したというのに。「鳥インフルエンザはそんなにうつるものではないよ」というのが主催したり参加した研究者達の本音なのだろうか。
「今年は人間のインフルエンザ患者が少ない。倍以上の応募者があり、ぎゅうずめの会場なら、それを機会にインフルエンザが流行り出すかも」とある医者が笑っていた。それにしても信用とは大したもので、権威者がそこに居ればトリフルウイルスなど怖くはないという心理でもあろうか。完全防備の上の立ち入り調査にしても危ないことには変わりない。いわんや調査対象外の1000羽以下が、すべてコンプライアンス重視と性善説に立って居る訳ではない。こんな時期には研究者達お役人も鶏飼いの身になって慎重に行動して貰いたいものだ。

さて、事態はますます風雲急を告げて来た。しかし考え方によっては1918〜20年のスペインカゼでも、人間だから大問題だったが鶏に置き換えたら大したことはない。2%に満たない斃死率ということになる。放って置いたら日本中の鶏がいなくなるなどの、いつかの農水の係官の説明は的外れだろうが、これからも実際は人為的に殺し続けなければならない、そのほうが憂鬱である。

あちこちの知事さんが出て来て、異口同音「これ以上感染が拡がらないようにしたい」といわれる。尤もな言い分だが土台無理な話だ。恣意的(その場の適当な言い逃れ)過ぎて反って裏切られた消費者の反応が怖い。國や県のいうことを間違いなく実行して居れば感染を防げる。防げないのは業者が悪いと一方的に取られかねない。そこに法令違反でもあればもう決定的で、瑕疵でも似たようなものである。これで風評被害を防ぐことになるのか何時も首をかしげるが、どうも単なる言いくるめに近い気もする。

とにかく時季的にはあと2カ月の辛抱だ。むしろ精度が上がった形での、環境を無視した鶏だけを対象の、その後の焼け跡(抗体)調査での摘発のほうが怖く、これだと本当に鶏は居なくなりかねない。一業者500万羽飼育が生き残りの条件だどころではない、と言って居たら流石にたった2カ月とは何事だと怒られた。本当は皆が戦々恐々としながらの長い長い2カ月になりそうだというわけだ。研究者は意に介さなくても一般の業者はその間全く動きが取れなくなる。直接会っての商談などは今度のようにホテルを使えば安心と言う訳にも行くまい。風評によっては鶏飼いは鶏飼いでお里がばれないように外出にも隠密行動を取る必要が出てくるかも知れない。研究者が反対でも、ワクチンで済むならと皆が考え出すか、春が来て喉元過ぎれば業界はまた500万羽競争にうつつを抜かすか。

H 19 1 30. I,SHINOHARA.