鳥インフルエンザ問題の今後(189)



岡山県高梁市の発症事例のウイルスが宮崎と全く同じ型とすれば、平飼いとケージで感染速度がまるで違ってくる。これが接触感染での特徴である。ただ鶏を使っての感染試験の結果があまりにも激烈なのは、試験の手法に問題がありはしないかという疑問も寄せられて居る。

今回の宮崎などの鶏病発生に際して、人体用のインフルエンザ簡易迅速検査キット(A型インフルエンザ抗原検出試薬セット)が役に立ったようだ。一昨年の茨城株の場合は、肝心の発症がはっきりしなかったので抗原が検出出来ず、焼け跡である抗体を追いまわすハメになった。今度は強毒タイプで殺処分を含め耐過するものが少ないとすると抗体は見つからないし、抗原検出と同時に抗体調査をやって耐過したものが一群中に見つかるようなら弱毒が強毒変異したことにもなろうか。そのほか他の生ワクチンの使用頻度など、われわれもせめてもの自衛の為に正確な情報が欲しいところだ。

未だにバックヤードヘンの場合などNDのような話を聞くことがある。こんな時にも鶏が生きて居るうちに数分でAIとの類症鑑別(インフルエンザが陰性ならばNDが臭いという程度でも)出来れば報告と対策を同時進行で迅速に行えそうである。近年、特にNDワクチンの消費量が激減している。人間の場合は去年はインフルエンザが大流行し、今年はノロウイルスがそれに替わった。去年の抗体がそんなに強く残って居る筈はなく、やはり未だ良く分かってはいないが、しばしば繰り返される広いエリアにおける菌交替やウイルス交替現象に思えてくる(全く科学的ではないが)。そんなことから鶏のほうではますますAIとNDの大ざっぱで迅速な類症鑑別が必要になる。先年の福岡の例のように、とりあえず隔離とNDワクチンのスプレーさえやって置けば拡がりだけは免れた筈なのに家保自体にその技術がないばかりに大事にしてしまったとみられるケースもある。(あまりにも形式的な消毒に頼り過ぎている)

PPQCの加藤先生のご報告では韓国での発症地近隣500メートル以内の犬猫までの屠殺を主導したのは金教授と言う訳ではなく人間方面の医者達の強い主張だったという。日本のウイルス学会だって同様だろう。発症はおろか茨城のような焼け跡調査であっても殺せ殺せの大合唱になるに決まって居る。そんななかでその焼け跡発言の岡部委員(感染研センター長)の著書やコメントは我々にも分かりやすい(感染症から身を守る本など)。

さて京都でのフォーラムでもウイルスがなぜ鶏舎内に侵入したかが疑問視されているが、山村部では無数の畑ネズミや野ネズミが跋扈している。これらは湖沼周辺にも群がって居る。彼らなら危険なウイルスを含むガンカモなどの糞便を汚泥ごと体に付着させたままいくらでも防鳥網くらいかいくぐる。食い破ってネズミ道も作る。ネズミは鶏舎に侵入してケージをよじ登り直に鶏と接触出来るし昆虫などよりはるかに大量のウイルスを含む沼地の汚泥などを体に付着させることが出来るからだ。ガンカモ白鳥などが持って来たウイルスをただくっつけて運ぶだけなら、この時期水鳥見物の人間のほうが怪しい。しかし実際の発症は山の中だ。しかも防鳥網を潜るとなるとネズミ以外にない。ネズミだと体に付着させるだけで保毒する必要すらないからだ。このように現場では聞きかじりの情報をただ経験に照らしておよそ科学的でない思考をするのが常だが、それでいて案外その予測の方が当たってしまうことが多い。これからもどこがやられるか分からないし、どこがやられても大変である。その罹り方からしてポツリポツリあちこちがやられるかかたちだろうが、あと2カ月の辛抱だ。人のウイルス同様、時季が来れば何処かへ消えて仕舞うことだけは請け合いである。

H 19 1 29. I,SHINOHARA.