鳥インフルエンザ問題の今後(187)



最初に発見された清武町の肉用鶏種場の場合は、國の防疫マニュアルを忠実に守って尚発生を見たし、今回の日向市の肉用鶏農家での発生では、飼育期間が短くAIの危険は少ないとされた60日令以内の雛での発症であっただけに、それらが実際はあまり当てにならない神話であっても悉く覆されることに戸惑いがあって当然だろう。

しかし私達は私達なりに、別の意味でブロイラーの場合は危険性は少ないと考えてきた。ニューカッスル病猖獗時に、移行抗体とは無関係に初生雛にワクチンをスプレーし、以後2週令、30日令、45日令とスプレーを繰り返した雛は、強烈に発症している群に同居させても100%耐過したことは度々報告した。そしてこれは通常の抗体上昇の免疫を期待したものではなくて学者の反対を押し切った《お山の大将》方式、のちに言う競合排除であると非科学的ではあっても現場の知恵として述べてきた。そして当時、IBの野外毒に対しても同じ方式で極端に違う型のデユファーのマサチューセッツ株、サルスベリーのコネティカット株の何れでも同じ効果を認めたのである。そして従来、NDに対して生ワクで対処するブロイラーの場合はこの方式が多かった。一般によく懸念されるように生ワクのスプレーは他の細菌、マイコなどが絡んでリアクションが出ることが多い。採卵ビナのように搬出先で継続飼育される場合はこれでは困るが、そこで屠殺されてしまうブロイラーの場合はそのくらいは無視できる。これがAIに対しても有る程度は役に立つかもと期待する面はあったのである。

ところが主に研究室筋から、単なるリアクションではなく、当のウイルスを呼び込んで誘発させる懸念があるとするとんでもない説が出て来て、むしろこれが主流になってしまった。いまでは真顔でそう説く学者がいる。2002年、NBIの招きで来日講演したイタリーのカプア博士は、じつはこのことを警告している。即ち、AIが侵入し、養鶏場がニューカッスル病対策を手控えた。そこでAIの間隙を縫って今度はNDが流行してしまったと。そのNBIのT部長は《基礎免疫》ということをいわれる。基礎免疫という言葉は医学用語のどこにも無いような気がするが言い得て妙である。要するに外来ウイルスの取り付こうとする粘膜に予め、絶対無害なものを植え付けて生涯防御してしまおうというのである。それに有効だとすすめているのがMg,Msの生ワクの点眼である。そのかわりリアクションが出る恐れのNDなどのスプレーにはワクチンメーカーとして反対される。これは至極当然である。育成業者などはこの方法をとるべきである。

さて宮崎は今後どうなるのか。
気になるのは相変わらずの《清浄国論》に立脚した、飛んできた火の粉を発生源と見立てて包囲殲滅しようとする作戦である。そこを封じたから安全だと宣伝するやり方は、当然のように別の所にも落ちる火の粉が燃え上がる度に改めて「またか」とがっかりさせられる。いかな感染経路究明チームでも直接の火元が分かる筈もない。大本はチンハイ湖だとする位だろう。実際は火元を断たなければ意味はないのにそんなことは出来っこない。もっとも火の粉退治が度重なれば国民全体とすればそれに馴らされてもしまうのか。それにしても当事者達は大変である。風評被害は薄れても反面、地元の苦しみは伝わらなくなっていく、茨城が良い例である。

近くに落ちた火の粉を鶏舎内に持ち込むのは何の場合も多くはネズミだった。今回のはネズミに対する毒性はウイルス2〜3個か(97年香港)その50万分の一(浅田農産)か。

H 19 1 27. I,SHINOHARA.