鳥インフルエンザ問題の今後(186)



喜田教授の「ようやく来たか」のコメントのように2005年、集団発生地の家禽などから逆感染を受けて北の営巣地に帰った自然宿主のガンカモなどに初めて病原性を持ったウイルスが渡りで南下する、あるいはウラルを越えてヨーロッパヘなどと危惧した割りには家禽の大発生は少なかった。各国の野鳥対策などがうまく行ったからだろう。また現場の体験からも今回のような接触感染型ならば他のワクチン類の干渉や競合排除を受け易く、また将来的には交差免疫による局所の免疫で器官入り口での防御がやり易い。

東國原知事の登庁第一声が県内の鳥インフルエンザ続発だとはいやはやである。
簡易検査とはいえ11羽中、陽性1、疑陽性4ということなら、教科書通りなら発生は2週間以上前である。前回と同じ強毒型でも、やはり感染当初のウイルス量が少ないうちは耐過して抗体が出来るらしい。これが次々感染するうち変異でなくともウイルス量が増大して、伝えられるさまざまな形で結果的には100%近い斃死にもなるということか。

当初からどう考えても、バイオセキュリティが完全といわれた清武町の種鶏場が初発であるとは現場としたら考えにくい。結果的に罹った鳥の全部が死んでしまうような強毒型なら片付けてしまえば痕跡としての抗体すら残らない筈である。いつも感じるのだが、すべての発症現場を的確に捉えるのは実際は不可能に近いだろうとも懸念される。

一方、関東は関東で去年までの茨城型の後遺症は続くと思わざるを得ない。あれ以来、PCRでの検査技術が向上し、WHO推奨診断マニュアルでも検出不能とされた茨城株も検出可能になったとすれば引っ掛からないほうが不思議である。國の方針で発症も無しに抗体の有無だけの摘発方針が続く限り発症が無くても鶏飼いは生きた心地はしない。逆に発症してくれるのなら方法はあるのにと思う。

お隣韓国のやりかたも酷い。発症現場の3キロ以内は豚から犬猫まで殺したといわれる。それでも効果は無く5例目が8キロメートル先に出た。さきに効果がなかったから今度はやめるという訳にはいくまい。不公平も言われるからまた同じことを繰り返す。オスターハウスか金教授かである。あの大殺戮でオランダ鶏界は一時期見る影もなくなった。流石に2005年はワクチンを視野に入れた。香港も同じで一年早い。日本での500万羽養鶏指向は鳥インフルエンザに対する、國の方針がはっきり決まってからでも遅くはあるまい。もともとは養鶏の集中を避けるのが対策の第一だとのカプア博士の助言もある。

まあ今回もその罹り方からして人間のインフルエンザ同様、あちこちポツリポツリといくのだろう。先走って殺しまくらないよう祈るばかりだ。H5N1に対して異常なほど厳格な韓国もH9N2対策は後手後手だ。我が国のH5N2だって見つかったものを殺しただけに過ぎない。姿が見えないだけ、そしてはるかに移り易く抗体が見つかればダメージは同じだけにわれわれはこっちの方が恐ろしい。

H 19 1 24. I,SHINOHARA.