鳥インフルエンザ問題の今後(185)



ウイルスそのものの強弱よりホスト側の条件の問題であるとの考えはさておいて、教科書どおりの、ガンカモなどの野鳥が弱毒のウイルスを運んで来て、それに接触した鶏の中で巡回する間に強毒化するケースならば、そこでの強毒株の封鎖が大事であり、同時にそれが可能であると考えて、韓国も日本もやっているに違いない。だがもうこれだけ全アジアに拡散した今、強毒株そのものが野鳥と云わず人、資材に付着してウイルスが生存可能な短時間のうちに移動するかたちのほうが可能性が大であると考えなくてはならない。宮崎の場合も、どうも抗体そのものの存在がぼやけていていきなりの強毒型らしい。農水や県の指示に従って、完璧な防御体制を敷いて居て尚且つやられたのだからどこからか火の粉が直接飛んで来たとしか考えられない。その飛んで来るとされる距離がウイルス自体が生存出来る時間的範囲としてもあまりにも広すぎる。実際に感染経路究明チームが調べてもシークェンスが韓国流行株と同じだから位しか分かりっこないだろう。

我が国で3年前の強毒型発症時、各地で変死した家禽や野鳥の死骸が発見されたが、どれも異常はなかった。抗体調査だけなら糞便など調べたってろくに捕捉出来ないのが普通らしい。ただ同じ時期に動研の調べたカラスはウイルスを持って居たし感染発症もしたと報告されて居る。韓国の対応でも言えるが、火元が分からないのに、火の粉が飛んで来たところだけを問題にして周辺500メートルの範囲の家畜からイヌネコなどのペットまで殺しまくっても実際効果はなかった。殺しまくったからこの程度の発生で済んだとするのはあまりにも非科学的である。今後についても安心感どころか不安だらけだ。

何度も繰り返すが、実際の感染が、言われるような飛沫核感染ならば感染速度も感染範囲もひろくそれでも絶滅が可能と見るなら場合によっては4年前のオランダ式対応も必要だろう。しかし今の人間のインフルエンザの場合のような飛沫感染なら接触をさけ管理者が手洗いうがいを励行することが消毒と同じように有効な筈である。今度の宮崎例のようにいくら初動管理が良かったといえ空気感染なら隣接鶏舎に飛ばぬ筈はない。接触感染と決まればいたずらに殺す範囲を拡げるより、出たものを殺し、周囲を遮断することが一番有効な証拠である。ニューカッスル猖獗時もこれを如何に素早く行うかが現場の技量でもあった。飛び火は一カ所ではなく同時火災を起こし易い。燃え出したら即刻消し止めることが重要である。報告も大切だろうが、即刻火を消すことを忘れて火事だ火事だと騒ぐだけでは反って大火にして仕舞いかねない。現場が飛び火による小火を一刻も早く発見して、服を脱いでかぶせて消し止めることが《隠蔽》なら何をか言わんやである。はからずもこれが機能したから3年前は大火にならずに済んだこともあるとも考える。無論コンプライアンスの面では大問題であるから実際は目を瞑って手をつけずに報告することになるだろうが、難しい選択である。しかし感染のかたちを掴んだら、報告より何より小火を消すのが一番有効であることは火事の場合も防疫の場合も同様であることは論を待たない。

接触感染で、うつる速度は遅いが毒力は強いことが予想される今度のような株は、罹れば100%の斃死で抗体も残らないだろう。焼け跡の痕跡すら残さない。だから抗体調査だけで《清浄国》というのはおかしい、と喜田委員長は輸出元の諸外国にむけての発言を小委員会の中で行った。このことは同時に国内に対しても言えることだ。韓国内に浸潤するH9にしても最早手はつくまい。日本も極東にあって同じエリアである。隣国がそのような状態に有る以上、いつまでも潜在流行によるシフトの懸念だけで予防ワクチンを否定することはあまり意味がないとも思われるのだが。

H 19 1 21. I,SHINOHARA.