鳥インフルエンザ問題の今後(183)



発症、ウイルス(学的)調査、抗体調査のいわゆる3点セットは小委員会で喜田委員長が清浄国に関して行った発言だが、これに応じた岡部委員の「焼け跡を調べる抗体調査」発言に見られるように、喜田委員長の殊更分かりにくい持って回った言い廻しでなく端的に国内調査に取り入れるべき問題であり、当時の茨城における喫緊の問題でも有ったはずである。結果的に茨城では焼け跡調査に終始し、焼けぼっくいに火がつく事を恐れて焼け跡の火の粉を見つけては無実の鶏を殺しまくった事になる。そしてその反省は一切行われていない。

今回の宮崎の強毒型発症でも、既に焼け跡たる抗体が陽性だったとすれば、喜田教授の「二週間で居なくなる可愛いウイルス」は他の個体に移動していて、事実はもう飛び散った後である。にもかかわらず続発はその鶏舎だけで他の鶏舎に及んで居ないとすれば、これはまだ扱い易い《飛沫感染》であろう。大槻教授が今回のは3年前の浅田農産の事例とくらべてはるかに感染速度が速く、より悪質だと云われたことは肯んじ難い。ケージ鶏舎での伝播と、患鶏とその排泄物に未感染鶏が無差別に接触出来る平飼い鶏舎のそれは同列に論じることは出来まい。

当該鶏舎が全滅に近いのに隣接鶏舎の鶏が何でもないのは、やはり感染速度が遅いと見るべきだと思う。それでいて症状が激烈なのはウイルスがまだ本当に鶏に馴染んで居ない証左とも言える。古来、家禽ペストとしてもっと馴染んで居たイタリアやオランダのH7タイプだと絨毯爆撃になりかねない。この場合は云われて来た通りの《飛沫核感染》いわゆる空気感染である。現場ではこの両者つまり、平飼いとケージ、飛沫感染と飛沫核感染の扱いはまるで違って来る。馴染みの深いニューカッスル病に例をとればケージ鶏舎の場合は発症を見てからでも、競合させるワクチンの先回り噴霧によって充分対応出来るが、平飼い鶏舎の場合はその鶏舎だけは間に合わない。これがIBだとケージでも先回りは無理である。

この先回り戦術は通常の免疫を狙うものではなくあくまでも一時的な競合排除である。これでも3カ月、ばらつきを見て1,5カ月は有効である。このことから繰り返すように1997年の南中国のH5N1に対するH9N2の作用期間が概ね3カ月であったし,HもNも違うところから当然この競合排除か干渉と思って居たら、れっきとしたT細胞による細胞免疫だとされて驚いたのである。このことから昨年11月の韓国のウズラでの致死的発症は、もともとH5N1には感受性が高いとされていたウズラの発症は当然とされても、一方で混合容器を懸念されるほどH9N2の既存感染率が高いウズラが、特にその浸潤がひどいとされる韓国内で、改めてH5N1にやられたことにも驚いた訳である。

まあ喜田教授が「2週間で(痕跡である抗体を残して同一個体から)居なくなる可愛いウイルス」と云われたそれが実は3週間居たなどという報道があってもインフルエンザの場合は《抗体》が岡部センター長の云われる《焼け跡》である事実は変わらない。また清浄国の旗を掲げて来た我が国もその実態は、調べれば焼け跡だらけである可能性は高い。特に無症状でもH5,H7と名が付けば高病原性とされて淘汰の対象となる我が国にあって、焼け跡だけで事実上摘発されてしまうその養鶏基盤は、500万羽飼養を目指す企業養鶏が主流とあっても、首筋がうそ寒い現状に変わりはないと私自身は感じて居る。

H 19 1 17. I,SHINOHARA.