養鶏現場から考える



山口が終息して本当によかった。
喜田教授は「今後のモデルケースになるだろう」と胸を張られたが、出たら殺処分は当然としても、あの惨状と後の風評を含めた経済的、心理的被害を思ったら、イラクの自衛隊の「やられたらやり返すより無い。そこまで来たら法律がどうのと云ってられない」との伝えられる心境にも似て、可能かどうかは別として、もう絶対出すまいと考えるのは当然といえるだろうし国側だって同じだと思う。

去年の春以来、不可解な鶏の呼吸器病が育成鶏中心に広まった。その中でNBI−RecommendationのMg,ND,NBの基礎免疫を中心のワクチネーションプログラムをもった育成場の雛は無事で、あるいはLPAIにも有効ではないかと時節柄、興味をもった人も多かった(そのくらい深刻な所もあったと聞く)と思う。

国外の話でも、トラとウンピョウがトリインフルエンザで死んだという各新聞の報道には驚いた。苛政虎よりも猛なり、のトラがやられるとは。そうかと思うと、ベトナムやタイで、普通の肺炎でころころ死んでしまう我々老人が無事で子供や壮年がやられる。息子がインターネットで探して来て、親父の云ってたのと同じ意見が出てるよ、と云う。

そこでは過去に流行ったインフルエンザとトリのH5N1を比較してNAを30年以上研究している学者の意見として、HAに対して産生された中和抗体とは対照的に抗NA抗体は感染を完全に防御出来ないが発病を抑制することが(中略)動物実験で繰り返し証明されている、などと出ていて、面白そうで興味をひかれた。

ここからは素人の私の勝手な想像だが、HAは無論のこと、過去のインフルエンザでNAが合致するのはH1N1のスペイン風邪、ソ連風邪しかないが、子供のときの罹患による免疫は長続きしないとして、40歳以上の人が一応無事な事実から35年以上前に流行った風邪をリストアップするとソ連風邪は近すぎ、スペイン風邪は遠すぎる。となるとアジア風邪か香港風邪で、どっちもN2だ。それが老人の免疫に関与していそうだという仮説が成り立てば、難しいことは分からないが、H5N1に対して、人間の現在のインフルエンザワクチンはどれも或る程度発症を押さえてくれるかも知れないと、いま勧められている以上に期待して医者と相談の上、場員にはワクチンの重ね打ちを勧めている。

現場では常に、危険を排除した上で論より証拠で進むことが必要と思っている。本来肺炎には弱い筈の老人が若者より強く、人間より強い筈のトラやヒョウが、死んだ事実は、明らかに免疫の差と考えられる。鶏の場合は鎮圧されてワクチンが不要となった例は無いと云ったが、ILTのように局部的で生ワクがある場合はその限りではない。

だがNDやIBのように広範囲で普遍的なしかも重要なものは、予防がすべてで、世界的異常発生のAIなら云わずもがなである。

繰り返すように殺処分は事後処理でしか有り得ない。予防を考えず葬式のやりかたを教えているだけで、怒り心頭に発しているとは、被害地の耐え難い言葉として本当に云い得ている。その理不尽をあくまで訴えていくべきであるが、為政者側も学者諸氏も血の通った人間として、もう少しその痛みを察していくべきではないのか。

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