鳥インフルエンザ問題の今後(182)



清武町の発生現場のガセネタを含めた情報も段々シビアなものになって来た。

仮に抗体の有無を調べる人体型の簡易キットによる診断ならば実際の発症時期は少なくとも2週間以上溯ることになるし、3年前の京都での事例と同様、否それ以上に鶏舎間の感染速度が遅い。そのくせ一旦発症すれば症状は激烈で同一鶏舎内では100%に近い斃死率らしい。映像でみても一鶏舎が全滅しているのに隣接の鶏舎の鶏は平然としている。ニューカッスル病猖獗時はもっと絨毯爆撃になった。罹り方がまるで違う。他の鶏舎の鶏は日齢ロットが違うからホスト条件が大きく違う場合もあろうが、人間が繁殖し管理している鶏は野生の鳥類などとは違って同一ロットならば、その資質はほとんど変わらないからウイルスが一定濃度になれば何万の鶏でも一羽と同じで一斉にやられることになる。

それにしても飛沫核感染は疑わしい。いくら資質が違っても、片方が全滅に近いのに一週間も隣接解放鶏舎の鶏群が平然としている訳がない。三年前の大分のチャボの時の疑問(背中合わせの数羽は何ともなかった)と同じである。どうも人間のインフルエンザ同様飛沫感染が主体だと思わざるを得ない。この場合はいくら消毒薬をジャブジャブかけても効果はない。かえって条件を悪くするのが落ちだ。有効なのは人間ならやはり手洗いとうがいということになる。

さりとてニューカッスルでもIBでもそうだが飛沫核感染の場合も隣同士がやられるわけではない。ウイルスは同じホスト条件の鶏を求めてかなり遠くまで飛び火することは飼育現場では常識である。したがって我々は常に馴致や干渉や競合排除によって宿主の条件を変える努力を重ねて来たつもりではある。

しかし実際、あまり当てにならぬことはあっても科学的に考える場合は、やはり免疫が防疫の主体であって消毒と隔離だけのバイオセキュリティは甚だ心もとない。それなのに鳥フル対策ではその免疫抗体が目の敵にされる。これでは現場はお手上げである。

感染研の情報(RT−PCR法による鳥インフルエンザウイルス遺伝子の検出(第2版))を覗いても、その検出技術は格段の進歩を遂げ、H5亜型に関しては茨城型を含めあらゆる株に対して対応出来、もはやWHO推奨の診断マニュアルを凌ぐと豪語する。それに、各地方の家保による検査も平成17年から、同じRT−PCR法をとることになっている。ドイツや台湾の野外調査の結果を見るまでもなく、我が国動衛研の昨年の海外発表(別項)をみても野外でのH5亜型の存在は、もう隠せない事実である。これから先、鶏だけが陰性で居られる筈がない。その感染研の岡部センター長、喜田教授の云われるように、今後摘発には、3点セットの具備を条件とするのでなければ鶏など飼えるものではない。業界としてそれらの要求をせずに、やれ産地銘柄がどうのハセップがどうのと金や手間暇をかけても、進歩した検出技術で陽性反応が出ただけで摘発され続ければ、いずれ国中の養鶏が茨城と同じ憂き目をみることは火を見るよりも明らかである。

今回のような発症はやむをえない。ただ3年前の発症時、発症事例は公式発表の4件だけだったと信じて居る現場がどのくらいあるだろう。だがあれで日本中が目茶苦茶にならないで済んだ。検出技術が格段の進歩を遂げたとされる今回は、3点セットを重視する方向に行政の舵を切らない限り、時期的にも悲劇的な経過をとることを懸念する。否、懸念する以上に自場とすれば半ばあきらめて居る。廃業宣言が延びたに過ぎない。借金を無くして首を洗って居る心境だ。 わが家の検査もこの18日である。

H 19 1 15. I,SHINOHARA.