鳥インフルエンザ問題の今後(181)



宮崎県でそれらしき発症があったとの報道で、H2N2のアジア風邪のように二年で全く消えてしまうようなのが寧ろ例外で、当初の大発生の後は同じ地方で概ね二年周期位で流行を繰り返して居るのが通例のようだからもうそろそろと思って居た所ではあっても流石にうんざりである。おかしなもので過去の発症でも一カ所で済んだ例はないのは何故か。

押しなべて現場の対策は、それが綿密な実験によって証明され裏打ちされたものは少ないから決して科学的であるとは言い難いが、さりとて一概に唾棄すべきものであるとも思わない。それどころか変な実験をもとにした変な論文より現場の数々の体験のほうが実際の役には立つのだという思いは、その変な実験すらない最近の東大問題なんかを見て居るとますます強くなって来る。

科学的でないと云われればそれまでだが、鳥フルの発症のような類例は今に始まったことではない。いみじくも先般、喜田先生が漏らされた通り(別項)であり、それが我々現場の感覚でもある。ウイルスに対しては先ず免疫といわれるが、実はこれが当てにならない。干渉が起きないように理想的にワクチネーションを組み上げこれで完全だとするほど実はやられ易い。なぜなら野外での、実際のさまざまな雑多なウイルスに対する防御はこの干渉や競合排除によって為されて居ると思われるからである。だから少なくとも現場では干渉を避けようとするだけでなく寧ろ利用すべきだと考えるが、このことを免疫学者にいくら相談しても肯んじてもらえないのもまた当然である。

人為的に干渉、競合排除を期待するのは、それが期待出来る種類の生ワクの頻繁スプレー以外にない。そのことによって不顕性の細菌類が顕在化したり、重篤化したりするかもしれない。しかし私自身の昭和40年代からの体験からはそのようなことはなかった。そうでなくてはもう二十数年に及ぶ卵の完全予約システムは成り立って居ない。

インフルエンザは飛沫核感染だといわれる。ならば開放型鶏舎のほうが有利であるし、直接的な飛沫感染ならば感染速度がぐんと遅くなるから将来干渉する有効なものが見つかればスプレーで先回り出来る勘定になる。内蔵型ニューカッスル病に対してはB1のワクチンが効かないとアメリカでは盛んに云われて居るが、これは通常の免疫だけを期待して居るからであり、我々はずっと実際は競合排除を兼ねてやってきて(お山の大将)実はそれで充分効果が期待出来た。競合排除や干渉によるウイルスの撃退が理屈通りにできれば感染そのものを防げるかも知れない。しかしである、日本獣医師会雑誌による1997年の南中国の事例でH9N2の存在が強毒H5N1の発症を防いだ事実がHもNも違う型による単なる干渉ではなく、れっきとした細胞性免疫によるものだとされていることは、交差免疫の範囲がかなり広いもので、そうだとすればやはり強毒株がシフトしてしまう懸念も拭えないことなのだろう。

話はそれるが韓国でウズラがH5N1にやられた事例は興味がある。ショートリッジ博士の説でもウズラは特定の亜型を持ち、混合容器として懸念されるとされていたが、すでにH9N2が広く蔓延して居る韓国(大槻教授)で今更ウズラがやられたということは、H5N1が更に変異していることにもなろうかということなのだろうか。翻ってオランダではオスターハウス博士の主導で3000万羽の半ばを予め殺した。人間の場合もこのように絨毯的にやられた例はなく宿主側の条件次第だ。亜熱帯以外ではウイルスは時期的に全く姿を消し又忽然と現れる。人為では如何ともし難い気もするのだが。


H 19 1 13. I,SHINOHARA.