鳥インフルエンザ問題の今後(180)



猫の風邪症状が流行って居る。猫の風邪が多い時季は鶏の呼吸器疾患も多いという俗説もあるから油断はならないが、今年は今のところ順調だ。尤も羹に懲りて膾を吹けば吹くほど、自ら火の粉を被ることになることを思い知らされた業界だから、皆なるべく動かぬようにするにしくはない。意味合いこそ違うが、物言えば唇寒し秋の風ってなもんである。

このところの海外情報も、皆古いことの蒸し返しである。最近のFujian−likeV報道も、その原因が中国のワクチネーションによるシフト株だとするような見え透いたWHO辺りの見解とやらも聞いて呆れる。この問題は二年も前の青森大会での島田発言を喜田教授はナンセンスの一言で片付けて居る。

一方でベトナムでは不活化ワクチンの一回接種くらいで人、家禽とも、その発生さえ押さえられたという。まったく暗闇での象の手探り状態から一歩も出て居ない。

いまのところ比較的はっきりして居るのは、いかなパンデミックでも、その地域での流行はせいぜい二カ月程度であり、それをやり過ごすことが個々にとってはいかに重要かと云うことくらいである。このことは家禽でのアウトブレークでも同様らしいことを我々は強毒、弱毒それぞれで体験した。まさに「帝力我に何かあらんや(十八史略)」で、その時季、いくら先回りして家禽を殺しまくっても、さして効果のないことは2003年のオランダと近接国のドイツの対応の差で我々も勉強した。なのにそのオランダを教師(反面教師としてではなく)として、そのやりかたを学ぼうとする。鎖国時代の南蛮からの情報の取り方となんら変わるところはなさそうだ。

そんななかでウェブスター博士の、これまでのワクチンでも(質が悪くなければの話だろうが)それなりの効果はありそうだというアバウトな話が、三年前のハルバーソン教授の報告にある「アメリカでは他の型に対してもH1N1などの不活化ワクチンが普遍的ではないが普通に使われている」という云い方に通じていて寧ろ納得出来そうだ。

鶏の病気が発生して、大喜びするのは普段鶏舎に入る機会のない学者達だけではないか、というシラケた気分がこの二年間で鶏飼い達の間で充満した。なのにまだ茨城ではOO農場に追い打ちを掛けて一方的な反省のみを強いて居る。肝心の現場での防疫方針、心構えは確立出来ているのだろうか。最悪の場合一時的には手がつけられない状況も危惧されぬではない。それには胸襟を開いた協力体勢が必要だが、官民の協力関係は茨城事件でズタズタになったままだ。ただ強権にものを云わすだけなら北風と太陽の話そのままになる危険がある。

H 18 11 8. I,SHINOHARA.