笹山登生政策道場…(パンデミック問答)



われわれ鶏飼い百姓はあまり高尚な議論は苦手だが、笹山道場は、無味乾燥で、そのくせ首を締められ兼ねない政府の小委員会と違って面白くて為になる。だから養鶏現場としては、せめて政府のプロパガンダもどきの主張が主流にはなって欲しくない。《とき》様に期待する所以でもあるが、相手がいるからこそ面白いので無責任のようだが大いにやり合って頂きたい。もともと頭の上のハエを追っ払うだけで汲々としている我々としたらパンデミックまで頭が廻る筈もない。ただ鶏段階で考えると《とき》様の云われる通りという気がする。

私自身も私なりに茨城事件を総括してみたが、それ以前の浅田事件でも、数年前3000万羽を犠牲にしたオランダの例でも、人為的処理は大成功だったとするその時々の国や当局の言い分とは裏腹に、犠牲ばかり多く、実は何にもなってはいなかったという疑問が払拭出来ないのである。このことは既にこのページでも繰り返し述べてきたが、あえてその一つ一つを検証すれば

(1)浅田事件については、浅田自身もあの農場が初めての事例ではなく、広く関東地方でも同じ時季に鶏病の大発生があって2チャンネルを賑わしたり、数箇所のウインドウレスが空になり従業員が解雇されたりした。ただそれが何であったかは無論検証されていない。ただ浅田は誰の目にも手遅れだった。それゆえにあれだけこっぴどく非難されたのである。既に廃鶏は出荷され動研のカラスは立派な陽性で感染も可能だった。それでもそれ以後は姿を消して、私が聞いた範囲でこれを心底不思議に思ったのは外ならぬ専門家達であったが良く考えて見れば我が国のインフルエンザの毎年の消長そのものであり相変わらず消えた先が分からずに居る。

(2)茨城事件はもう飽きるほど述べたからオランダといこう。茨城株と同様、強毒のオランダ株も県境ならぬ国境を越えてベルギーには行ったが隣国ドイツに侵入しなかった。確かに一軒の発生は記録にあるがそれ以上はない。ドイツの野鳥調査は有名で数え切れない亜型を検出しているが、その割りに養鶏での発症は少ない。我々は彼國のNDV強制接種のせいではないかと疑っているが、これはさておきウイルスが国境を越えぬ筈はないにもかかわらずその被害には國によって大差がある。実際その被害は無闇な強権的殺処分を繰り返した國ほど酷いのである。H9N2以来、大々的殺処分を繰り返した香港はだからその反省として一昨年、全面的にメキシコのワクチンを導入した。こう見て来るとワクチンはともかく、どうみても殺処分によって流行を人為的に阻止できたとは思えず、時季的、または時間的変異そして抗体獲得による自然終息としか思えないのである。

ま、鶏の話はここまでで、パンデミックについてオクスフォード大学のアンジェラ・マクリーン教授がBBCの番組でこう述べて居た。「理由は分からないが(ウイルス)感染症の第一波は規模が大きく、通常2〜3カ月の短期間で終わる。そしてその後第二、第三波と続き数年続く。だからせめて最初の感染の波から二人の子供を守るために都市部から避難させる。」

無論これが真実という保証はないが、少なく共我が国より数段進んでいるといわれるイギリスのプロジェジェクトを担う学者の言い分である。それが情けないような自分の家族を避難させて沈静化を待つというのだから、パンデミックの人為的阻止など出来ないとするのが本音のところで残念ながら《とき》様の云われて居る通りである。実際人間に馴染んでパンデミックになればスペイン風邪程度の死亡率(2%弱)に落ち着こうが、選ばれてやられたほうはたまらぬ。今伝えられるサイトカインの過剰反応による激烈な症例を防ぐ意味で良質なワクチンによる疑似体験(馴らし)が見直されてもいいと思うのだが、二度目が重篤化するという台湾のデング熱のようなアナフィラキシーショックみたいな形のもあるそうで。いやはや、、、。

H 18 8 22. I,SHINOHARA.