鳥インフルエンザ茨城問題の総括「敵を知る」の巻



喜田教授に云わせれば「たかだか2週間で消えてなくなる可愛いウイルス」。ウイルスとは仲良くすべきだとの持論と重ねれば放っておけばいいじゃないかというのが案外本音の所かもしれないと前から感じている。正直のところ、BBC放送などで伝えられたベトナムのあの状態が、たった1回の不活化ワクチン接種で収まったとは考えにくい。卑近な例では浅田農産の殺処分が有効だったとも考えられない。スペインカゼのようなパンデミックでさえ、たった2年間で消えてしまった。ところが現実にはマイルド化しただけで消えてはいない。毎年姿を変えては発生を繰り返している。これだけ続いていながら変幻自在の相手に対するワクチンの効果も未だに疑問視されたままである。要するに相手が掴めていないのだ。

われわれ人間も、そして鶏も五里霧中のまま尤もらしいごまかしを聞いているだけだという気がしてならない。こんなときに確定的なことをいう連中は危険でさえある。本当は殺処分もワクチンも、霧の中からたまたま現れた敵を、また霧の中に消し去るだけで、大局的には労して功無しと云うことかもしれない。その点、メキシコなんかは同じワクチンを使い続けて敵を顕在化させ続けている。顕在化させれば攻撃もできる。なにを馬鹿なことをやってるんだというのがUSDA辺りのこれも本音かも知れない。こんな鶏飼い百姓の妄想を、本当に笑える専門家がいるのか。

たびたび述べたニューカッスル病の体験だが、寒空に放りだしたらヒナの斃死がピタリと治まったのは本当の話だ。要するに飛沫核感染を防いだだけである。直接の飛沫だけなら感染部位が浅く、人間ならうがい手洗いで充分だ。だから私自身は流感にやられたことはない。鶏を飼って35年間も一日も休まなかった。だから河岡教授のレセプターが肺などの呼吸器深部に集中しているとの説は大いにうなづける。あれだけひどかったベトナムの鶏被害が聞かれなくなったのは、抗体が行き渡りウイルスも変異して雲隠れしてしまったからだろう。正確には検出技術が追いつかないだけか、合わなくなった抗原を使い続けているからだろうか。PCR法などでプライマーを正確に合わせれば大抵の検出は可能だという人もいる。だが野鳥の調査ならいざ知らず、わざわざ火中の栗を拾う馬鹿な国はさすがにないだろうとも云う。

2週間で消える可愛いウイルスは、何処かで人間による愚かな絶滅のための殺処分をあざ笑っていることだろう。あるいはせっかく友好的な仲間を送り込んだのに出来もしない皆殺しにしてかかったと憤慨しているかも知れない。ウイルス学者たちのそんな思いも見えかくれするのに、彼らの小委員会での実際の行動は「殺せ、殺せ」である。

一番わるいのは地元の家保である。数年前から続いた各地のED、気管支炎症状などはきっちりファイルして置かなければ怠慢である。そのような症例に実際対処してきた獣医も多いだろう。良くも悪くも、その消長は現場は皆知っていた。LPAIを疑っても検出は困難だ。なにせすぐ居なくなる可愛いウイルス達のことは計り知れない。因に韓国でもメキシコでも初期のEDは回復しなかった。国内でも同様らしかったが、今は皆一過性であると聞いて居る。正確な相手は分からぬが弱毒化は進んで居る証拠だ。

繰り返すが地方の家保は地元の現場の獣医達と連絡を密にして行政と現場の協力態勢をつくり、対策の行き違いをなくし、とかく型どおりの中央の見解を是正する重要な立場で、その意見は悉く現場の意見として取り上げられるのに、それが丸っきりの方向音痴だとしたら現場は全く救われないことになる。闇ワクだなどとは以っての外だ。

H 18 8 11. I,SHINOHARA.