鳥インフルエンザ茨城問題の総括「小委員会」の巻



見つかった範囲の陽性鶏群こそは始末してしまったが、今後に向けての方針も一向に定まらない現状に業を煮やしている業界の連中は多い。鳥インフルエンザ問題について行政の諮問機関として発足した小委員会も結局は、相手の全体像が掴めぬ中、それぞれの委員の専門分野である枝葉末節部分を主張して全体を推し量るような薄っぺらな大槻、喜田、河岡委員らの独りよがりなOK牧場でしかなかった。

小委員会の面々はそれぞれの分野では一流といわれる研究者であることはいうまでもないが、少なく共、小委員会は、その決定事項を受けて政策として執行させる立場にある。夫れ夫れの教壇で学生達にいい加減なことを云っても通る立場とははっきり区別すべきである。業界の百人が百人感じたことは、彼らのそれまでの言動と、小委員会での発言との乖離であった。繰り返すが小委員会は事実上執行政策決定機関であった。そこでは国の《正常国論》の立場を覆すような決定が為される訳がない。ならば普段、自分たちの研究に国の予算をつけて貰っているような立場の人達は、もともと遠慮すべきだったのである。

過去に強毒のかたちで大流行し円熟期に入ったウイルスそれ自体が、単独で強毒発症を繰り返すことはないが、新しい強毒型が侵入したときに隠れ蓑になる危険性がある。だから茨城株は殺すべきであるというのならまだ分かる。しかし大槻委員も河岡委員もそれ自体の強毒変異を確定調で主張したのだ。更に一歩下がった隠れ蓑説にしても、それならば他に隠れ蓑が存在しないことが条件になるが、それが数種すでに存在していることは動研の調査でも明らかである。したがって茨城マイルド株を標的に600万羽を殺さしめたのは明らかに間違いである。

そこで登場するのが《闇ワク》説であった。それが確かであれば懲罰的な意味合いも込めて疑似患畜として摘発できる。官側はそこを狙わせたとしか思えない。ただ、それを根拠にすると、喜田式消去法のような無茶な云い方になったし、それを受けたNHKの番組にみるようにだれが見ても下劣極まる映像になってしまう。挙句の果てはメキシコ、更にはブラジルなどからも馬鹿にされる体たらくとなったし、在りもしないジャパニーズブラックマーケットワクチンの世界に向けての国辱的発信にも繋がった。

一応の鶏飼いなら、第一感として、そんな危険なものに手を出す養鶏場は有り得ないと断言するだろう。いつもの文字通りのガセネタである。ならばそれに最初に飛びついたのは誰なんだろうと勘ぐりたくなるがそれ以上は云うまい。それが噂の公の立場だったとしたら全く無責任な話であるし業界の心を知らずして何が出来るのかと云いたい。

小委員会の黒塗りの疑似録を読み返しても、全く議論の深みがない。前東大学長の佐々木氏が日経8、10紙面で政策決定の一般論として述べられているとおり「一つの発言の背後に百、二百の発言があるべきだろう。いざという時のいろいろなことを考えているように見えない。だから「想定外」の領域が大きくなる」のである。小委員会はその典型だったと言えまいか。酷評すれば現場の苦しみの分からぬ、まさにOK牧場であり、OKコラルであり国論、研究予算の馬繋ぎ場に等しいものであったと私は感じている。

H 18 8 10. I,SHINOHARA.