購読最後の鶏鳴新聞



購読最後の鶏鳴新聞が届いた。
廃業に向けてはお客のほうも承知している。14名の場員で15000羽、年商1億5000万円、労賃一人323万円の昔ながらの養鶏を続けてこられたのは4000人の登録客と暮れ需要であったと前述した。少なくとも主な鶏病は完全に押さえられるのでなければ、暮れに2カ月もの予約を抱えるこのやり方は通用しない。ワクチンのないAIに人一倍神経を使って来た所以である。

去年は各地で鶏の呼吸器病の話を聞いた。出るな、という予感は割りと当たるものだ。それでもう限界かなと思っていたところだった。鶏にはワクチンしかない。薬が使えないのだからそれが総てだ。

ジェンナーの牛痘の話も、粘膜免疫のことも、現実の疾病に関しては皆試みさしてきた。アメリカのリポートで、H5,H7MPAIにH1N1なんとスペイン風邪のワクチンがもっとも広く用いられるなどとあると、すぐジェンナーを思い出す。だから交差免疫に関しては鶏飼い一人一人がジェンナーのつもりでいろいろ試みる必要があるとしてきたら何とまたNHK子供ニュースでやった。

日本は未だに清浄国の旗を降ろさぬからHPAIもLPAIも扱いは同じだが、いずれHPAIは殺、LPAIはワクチンでコントロールして清浄化を目指し、そのくせワクチンは使い続ける方向に行かざるを得なくなるのは自明の理で、現実にそうなるまで退避するのが賢明と思っているが、その間でも、廃鶏処分がままならず残っている鶏を管理している長男が「親父、やられたぜ」と飛び込んで来る悪夢を見続けるだろう。その長男はお山の大将方式でやろうという。ならAI相手に試して見るかとは云っている。ただし昔、椿原先生に云われたように「責任は持てないぞ」 ということで。

さて私にとって最後の鶏鳴新聞。やはり産業としての養鶏はワクチン無しでは成り立たないとする広島県養鶏協会長さんの悲痛な訴えは300万羽と1万羽の差を越えて共感できる。産業でなくても鶏飼いはワクチンなしでは裸で無防備な心境。それが基本心理だと云って来たが、一方の関先生、FLASH記事そのままの葬式の説明をされた後で、山口の迅速な処理をほめたたえ、最後は清浄国としてAIワクチン無しで安心して鶏が飼える国をと、結んで居られ、記事の対比としては近年になく面白く、肝心の養鶏家はどっちをとるのかなあと興味津々。

H 16 2 15 I,S