鳥インフルエンザ問題の今後(166)



無毒の茨城株ごときを対象にして茨城県が今後も監視と摘発を強化しようと云うのであれば、もともと終息宣言も安全宣言も無理な話でしょう。どだい、こんなものまで一くくりに<高病原性>の範疇に入れて淘汰の対象に加えて居る法の取り決めがおかしいと思いますよ。まだ世界的にも鳥インフルエンザの全体像がつかめて居ないが、もっと小さく<茨城株>に限定して、専門家の説明を聞いても一向に分からないではありませんか。

まずウイルスの基礎的性質をNHKの高校講座程度に学んで拝聴したとしましょう。
曰く、「茨城株は鶏に親和性が強く、伝染力が強い」としながら鶏舎間ではなかなか移らず、県の一部から出て行こうとしない、どうしてこれが感染力が強いと言えるのですか。
曰く「茨城株は中米型で鶏に馴化して居る(大槻教授)」そうです。そうでしょうとも。メキシコでは十数年来、同一型のワクチンを使って強毒型の発症を防いで居ます。ホットハウスを人為的にワクチンを使ってクールハウスへと誘導している形で、我が国のニューカッスル対策と同じです。ニューカッスルは家禽だけの病気、その対策とはおのずから違うとの説明はただの逃げ口上に聞こえます。そうやって永年、馴致してきた株が、茨城で発見されたということですが、中米から日本に来ると、それが何で急に強毒変異が確実になるのですか。

高校講座程度の話に戻りましょう。宿主にとって最初は強毒のウイルスも、自然環境の中で、競合排除されたり干渉を受けたり、交じり合ったり、薄められたり、ワクチンなどの疑似体験を経ることによって次第に無毒化してゆきます。あれほど猖獗を極めたスペイン風邪も4000万人を殺したとはいえ、無策のままでもまだ数十億の標的を残したままで、その流行は二年で終わったではないですか。尤も絶滅とは行かず、現在でもホンコン風邪の残党とともに毎年悪さを繰り返してはいますが。

大槻先生はご自分の実験で25経代で強毒変異した自然の弱毒株と、さんざ馴致を繰り返してすっかり飼い馴らされて入ってきた茨城株を同一に捉えて強毒変異の惧れを強調されました。ペンシルバニアでH5N2の強毒化に遭遇された河岡教授も同様です。御両者ともそのセンセーショナルな出来事に圧倒されて高校講座を忘れてしまわれたのかと思ったくらいです。宿主にとって毒性の強いウイルスも馴致によって、そう宿主側の条件によって弱毒化していくのは、我々でも教わって居る基礎的な知識です。それをさもインフルエンザウイルスだけは違うんだ、危険なんだと<茨城株殺せ殺せ>を煽ったのは貴方がたです。そんなことを云えば、蜂に二度目に刺された際のアナフィラキシーショックや台湾のデング熱など免疫系の過剰反応などキリが無いでしょう。ただあくまでそれは特異な例です。それをさもそれがすべてであるように喧伝されたのは疑い無くあなたがたです。

またちょっと聞き捨てならなかったのは農水省の方の個人的発言でこんなのがありました「茨城の例は弱毒で局地的に収まったが、強毒型なら日本中の鶏が居なくなる」。

世界的に見ても、インフルエンザウイルスは、人型も含めて遺伝的条件など宿主を選ぶ傾向が伝えられて居ます。一家族がやられても、回りの人間は何とも無いというような。集団遺伝学による鶏の場合は、そのストレーンの遺伝形質はそろって居ますから一養鶏場が全滅ということが有るかわり、別の系統を飼う隣の養鶏場は全く無事だということは大有りだと思いますよ。それに比べたら抗体を持つだけで人為的に殺され続ける無毒株の方が脅威ではありませんか。
(…つづく)

H18 6 24. I,SHINOHARA.