鳥インフルエンザ問題の今後(165)



このところ国内の鳥フル情報もすっかり影を潜め、関心はわずかに<愛鶏園>をめぐる公判に向けられている。少なくとも野鳥の範囲では世界的に、あらゆる亜型の抗体が見つかって居るときに、養鶏現場が自衛のために民間ラボなどに血液検査を依頼した結果が陽性となった途端、報告の義務が生じて届け出義務違反に問われたり、摘発淘汰の対象にされるのであれば、民間の獣医師も養鶏場も全く動きようがなくなってしまう。これに対して所管の農水省が被告人の主張を裏付ける形で、血液検査そのものは診断行為には当たらないとの認識を示したことは当然過ぎるほど当然である。

われわれ現場が手に入れる情報の範囲でも、いろいろの制約もあり、家畜伝染病の埒外にある地方機関の野鳥調査でいくら陰性結果が出て居ても「動衛研のカラス」の例や、海外での発表を目にすれば、それをそのまま受け入れて安心して居る訳にもいかないのである。そんな時に、養鶏現場の自衛の動きや民間獣医師の検査自体を封ずるようなやり方は、国が<清浄国論>を固持する為のまことにエゲつない強権発動であるとしてきたが、今回の認識で、その点にだけは、ようやく愁眉を開くことが出来そうである。

ただ当初の水海道の例では、確かにEDに対する診断を求めて居る。我々は普通に最もEDと軽い呼吸器症状を起こすIBに対しては生育後も同一型のIB生ワクチンを頻繁にスプレーすることによって、ほぼ完全に防圧出来ることを知って居る。従って、大槻教授がEDはIBによるものだろうとした時は寧ろ反対した。訳の分からぬ症例が各地で頻発している原因を、この際はっきりさせるべきだと思っていたからである。しかしその後の国による<闇、欠陥ワクチン>疑惑での疑似患畜扱いや、全体像も分からぬうちに尻尾だけを捉えての強毒変異説をもとに、法令をそのまま当てはめての無限の殺戮の可能性には、それでも国の良識を期待していただけに流石に肝をつぶした。百姓の現場といえども法律の細部までを熟知してかからねば<村上ファンド>ならずとも危ないことを知らされた形である。

今、日本人の間でも、戦時中、身の危険も顧みず多くのユダヤ人に旅券を発行してナチスの暴挙から救った日本の一外交官の行為が高く評価されている。無辜の鶏たちを、専門家としての見識をもとに、暴挙から救おうとした江口さん達のもう一つの容疑である<検体差し替え>についても国の理解ある認識を求めたい。更に別件逮捕とまで噂される<闇ワク疑惑>については、はっきり有り得ない。そこまで疑われたら、これまでの消費者や生産者間での「愛鶏園」の信用は何だったんだということになる。真面目な鶏飼いとしたら、もともと<絶対有り得ない話>である。話の本質が違いすぎる。

政府でも業界自体も茨城事例の反省はろくに行われず、全国調査の第二年度が始まる。

良いところもあろうが、押しなべて養鶏場の財務内容が悪すぎる。バブル期、一種デベロパーとしての土地評価が、一羽3000円の借金を許容した時期とは違う。先の見えぬまま互助金目当ての雛導入では危なすぎる。月に何千トンもの飼料を、手形を書き換えながら、わずかな口銭で扱う地方の飼料商もメーカーも雛屋も処理場も、鶏を巡る関連事業も危うさは同じである。超大手の国策会社並なところか、細々直売の自前業者位しか残らぬ採卵業界にはしたくないし、関連業者あっての養鶏業でもある。

H18 6 10. I,SHINOHARA.