鳥インフルエンザ問題の今後(164)



国内的には鳥フル情報は全く影を潜め、ちょうど去年の今頃と同じ状態になった。取り敢えず一難去ったのか、静かに深く潜行しているのかは定かでない。一方、親族間での集団発生が見られたインドネシアは大きな地震災害もあって、大変な状況だという。ただこの親族を選んで感染する形は、スペイン風邪を実際体験した、家内の母から聞いている。

満99歳の母の実家の祖父は根岸養庵という村医者で、スペイン風邪では、その部落で十数人が死亡したが、家族内感染が主で、村外の応援の医者が帰りに養庵宅でお茶を飲んで帰るのが常だったが、当時13歳の母を含めて、養庵宅では一人も発病しなかった。ただ一軒、夫婦での死亡例があったとされるのがスマトラの事例と違う。外電も伝える通り、屋外でクシャミを浴びるなど直接的な飛沫による感染より、室内で浮遊する形の飛沫核感染の危険のほうが多いことは、我が国の学者達の研究とも一致するし血縁者でなくても、室内での看病でウイルスを大量に吸い込めば同じように危険なことになると想像される。実は全く科学的ではないのだろうが、昔からの流感対策として室内を閉め切って暖かくするより解放して空気の流通をよくするほうが家族に罹らないだけでなく、病人の回復も早いという民間療法があったことだ。

これを鶏で体験したのが、前にも紹介したが、昭和41年に2週齢の雛がニューカッスルにやられた時の事で、20%位がやられた残りを冷たい屋外に放り出したところ全く死ななくなった。これらの雛は生育後、声帯をやられていて全く声が出なかったところを見ると、既に罹患してワクチンもなしに助かったのである。無論今ではこんな実験は許されない。これで見るとニューカッスル病もまた飛沫そのものより、深く吸い込む形の飛沫核感染のほうが怖いことになる。

ただ現場のこんな体験も当時、研究者達からは一顧だにされなかった。繰り返すように、そんな野外実験が許される筈もなかった。そんな現場の思い込みに過ぎないような体験が何十年も経って、研究者の間で改めて立証されたりするとうれしいものである。思い出す向きもあろうがマレックの猖獗時も、現場で流行ったのは屋根一つない野天ケージ飼育であった。その意味で、屋外での直接感染を防ぐため大量の鶏を室内に閉じ込める手法など、百害あって一利無しと私自身は思うのである。

スマトラ島の民衆の間に、隔離施設に入れられると殺され兼ねないとの恐怖から、逃げ出したり隠したりする風潮が広まったとあるが、陽圧式の病室は、罹患者本人にとっても本来はそのような形であることは間違いない。私自身そうなっても入りたくない気がする。近代的な治療を拒否して、直接感染させる恐れの無い裏山のバラックに一人で籠もりたい。そのほうが自分だけなら助かる気がする。実際大気中に拡散したウイルスが10の5乗とか感染可能なだけの仲間を呼び集めるのは不可能だろう。その意味で大気中のウイルス量を減らす効果のあるワクチンは有効だと思うのだが。

5月26日付夕刊フジが報じた厚生労働省と農林水産省の牛肉の黒塗り調査報告書など、「黒塗り省ちゃん」はいつもの事であり、だあれも驚かない。と同時に、どんな調査も、<初めに結論ありき>で予め路線と結末が決められ、それに沿った人選が行われるのもいつものやり方である。鳥フル問題も小委員会のメンバーが代わっても、世界の状況が代わっても、闇ワク原因説と清浄国論は揺るぎない形で、粛々と最終結論に向かうことだけは判っきりしている。《決められた路線価》は上がることはあっても下がることはない。

H18 5 29. I,SHINOHARA.