鳥インフルエンザ問題の今後(162)


面白番組に近いとはいえ昨夜の<ためして合点>で取り上げた《おれおれ詐欺》問題での脳の機能にはいろいろ考えさせられた。少なくとも飼育現場くらいは常々出来るだけ頭を柔らかくして置いて自由に情報を咀嚼出来るように心掛けて居る積もりでも、回りからみれば、なんて無学で臍曲がりな奴と呆れられているだろう。しかし思い込みに捕らわれてしまう脳の傾向は、細菌学の始祖とも云うべきパスツール先生でさえも濾過性病原体を見逃してしまったなどと紹介されている位(中原英臣 ウイルスの正体と脅威)だから、どんな大学者といえども思い込みから脱することは容易ではないらしい。

そう考えると、食品安全委員会の半数の先生方が辞めてしまったのも、研究者の良心が国や行政のご都合で踏みにじられるのに耐えられない、その全ては杜撰な検査のアメリカ牛肉を無理やり輸入させられようとしているからだと捉えること自体、我々は既に思い込みの虜になってしまっている証拠かも知れない、それをハッと気づかされるのが、その知見に基づく桜井よしこの記事であったり《とき》様のご意見であったりするのだ。

そうやってハッと気付かされれば、なるほどプリオン原因説はまだほんの説に過ぎないし、そうであるなら大本のスクレイピーのほうはどうなって居るんだと考えれば、やはり桜井さんの云う弱いところへのしわ寄せというのがカイワレの経験からも有り得るだろうと思い至るし委員の辞めた理由も本当のところは分からない事になる。それらをパッと見抜く《とき》様の洞察力とものの考え方をお世辞でなく現場では買うのである。黒いヒツジがいるからものを考えるきっかけが得られるのだと思う。

この思い込みからどうにも抜け出せないで居るのが茨城県の知事さんで前頭葉が立ちっぱなしの状態だ。鶏に接触していない人にトリインフルエンザの陽性反応が出ることがそんなに不思議なことだと思うこと自体が洗脳が融けて居ない「おれおれ」の何よりの証拠であるといえる。「おれおれ」が強すぎるから「おれおれ」に引っ掛かるのである。その<立場>から発せられる小委員会の公式発表より、茨城県内の有能な人達の意見を汲み上げたほうが余程真実に迫れるというものである。

確かに逮捕された江口氏は愛鶏園の管理獣医師の立場ではあった。しかし誤解される点があったにせよ、その行動自体は現場を知る専門家としての倫理に反するものではなかったと思う。知事として本当に県民の為に考えて呉れて居るのであれば、司直の手に委ねる前に自ら直接詰問するくらいの熱意もあって然るべきと考える。それによって泣いてバショクを切ったのだとすればわれわれもまた納得せざるを得ないのであるが、、。

我々の業界のように、講演その他で常々、小委員会の先生方に接して居た者からすれば、現在の彼らの立場からの発言は全く本意ではないと見て取れる。ひどい云い方だがあまりの変わりように、あれは普段の大槻先生ではなくて大OOつき先生だと吐き捨てる仲間も多い。《とき》様もかつて喜田教授の普段の言葉に「何だちゃんと分かって居るんじゃないか」と云われたことがある。そうちゃんと分かって居るくせに立場上全く違うことを云う。聞く方がそれを分かって聞くのなら未だしも茨城県のように100%それを信用してかかり、一方の業界側の言い分はすべて私利私欲によるものとしてニベもない。《とき》様ばかり引き合いに出して申し訳ないが、学問に関しても昔から名だたる多士済々の茨城県の知事として、ほんの少しでもいいから部下からウイルスの初歩を学んだらどうか。鯉ヘルペスの問題でも仮に「霞ケ浦方式」を全国展開したら、今頃日本の文化そのものが失われていたかも知れない。兎に角拙速を避けて慎重を期すべきである。

H18 5 18. I,SHINOHARA.