鳥インフルエンザ問題の今後(158)



鳥インフルエンザの拡がりで、イギリス、ドイツ、フランスからの鶏の交配原種の輸入が止まったことで、ほんの戯れ言に思える農水大臣の国産原種の開発方針がまことしやかに報道され、またそんな絵空事に騙されて肝心なことは手抜きされる何時もの手を食うのはやりきれない気がする。しかしそのことで改めて原種鶏とはおじいさん世代の鶏などとするマスコミ報道への質問が届いているのも事実である。

卵系に例をとれば、大動物のような個体選抜によらない、集団遺伝学に基づく系統間選抜の基本的な形ではコマーシャル鶏の多くは四元交配種である。この事から二元交配段階の種鶏を父親世代、純系である原種をおじいさん世代として紹介しているらしい。またおじいさん世代から数えればコマーシャル鶏は孫世代ということになる。

しかし実際には原種は既に純系(ピュア)でないことが多く、さらに原原種を保存している場合もあり、それぞれの世代の相性試験(ニッキングテスト)と後代調査(ランダムサンプルテスト)も欠かせない。これら各世代での選抜を繰り返して作出されたコマーシャル鶏はまた大量に供給されねば現代養鶏では意味がない。要求される育種規模の大きさたるや推して知るべきである。

こう考えて来ると、いくら近年遺伝子レベルでの選抜技術が進歩したとはいえ、一旦放棄した体制を元にもどしての国産鶏の作出など、その経費労力を考えたら、とても合うものではない。正に絵に描いた餅であり、口だけなら何でも云える典型である。要するに国も何か考えているんだとのジェスチャーに過ぎない。全く情けない国である。

多少の知識があれば、こんなことをまともに受け取る業界人は皆無だろう。ところがマスコミや一般国民はそのことが分からない。この乖離こそが問題なのである。

被害地の茨城の業界事情を中央団体は察知せず、現地をそっちのけに事を進めたとか、ひとり政府に限らず押しなべて現場を無視して机上での判断に委ねることの多い我が国のこの傾向は全く酷いものだ。愛鶏園と江口氏はその犠牲としか思えない。

現地、業界はもっと声を発すべきである。

H 18 5 11. I,SHINOHARA.
No.20055