鳥インフルエンザ問題の今後(155)



2002年のNBIシンポジュームで来日講演されたイタリアのカプア博士はDIVAの技術の解説とともにLPAI対策の重要性を強調された。しかしその後、海外事情に詳しい或る研究者が「それなのに何故イタリアには、あんなに沢山のLPAI亜型が入り込むのだろうか」と疑問を呈されていた。

確かに最近のイタリアでの野鳥サーベイランスでもcloacal swabで採取したサンプルをMベースのRT−PCRでスクリーニングしウイルス分離も併せて行う、日本の動衛研と同じ方法でそれぞれH4H5H7H10 など沢山の亜型を検出している。この点は東洋の台湾も同様ですくなくとも25のサブタイプをHI,NIテストとPCR法によって検出したとされる。日本では民間でDNAを対象にしたPCR法はRNAウイルスのAIVの増幅には適合せずNASBA法こそ取り入れられるべきだとの講演などがおこなわれた。確かに研究者の話を聞いてもPCR法は標準化が難しくプライマーの選定などかなりの選択肢があるらしい。しかし試験のほとんどがウイルス検出を併せて行って居ることから結果そのものには問題ないという。

このように調べて来ると、日本の場合<何故茨城に出たのか>という疑問より、<何故日本だけ清浄なのか>という公式発表への疑問のほうが何十倍も大きいことは子供でも分かることであり、心ある研究者なら誰でも日本の発表のように闇ワク疑惑一辺倒の、周辺国との対比でもウイルスにあるまじき不自然な説明に、世界の仲間に対しても耐え難い恥ずかしさを感じても無理からぬことと思うのである。そういえば最近世界のAI問題の会議の場では補助金の話だけで、実際の防疫面では日本の学者の影が薄いと感じるのは私だけだろうか。そして日本の場合、国民的に、世論を先導する形のマスコミも含めてその<怒りをぶつける方向>が明らかに違うのである。

例えば例の毎日新聞の記事「動衛研の独自調査について業者は怒りをあらわにする」類いで、実際<闇ワクに顔を真っ赤にして怒る業者>や<江口とはとんでもない奴>と叫んで居る業者は枚挙にいとまがない。我ながら「片目の猿集団」と自嘲する所以でもある。これは業界だけの話ではない。国の公式見解、公式発表がなければ、一切の情報が目に入らない「片目の猿」の構造は日本の民族性そのもので「農耕民族の集団自殺のメンタリティ(大前氏)」に外ならないとさえ感じる。

毎日新聞のいう「業者が怒る動衛研の独自調査」とやらも海外でのポスター発表が入って来るころには明らかになる。その頃には日本のLPAIの実態も明らかになりHPAIの発生を押さえる弱毒株のワクチン効果もあったことが分かるかも知れない。2003年にオランダでH7N7HPAIが大発生し、その被害がベルギー、ドイツに及んだ時、NDワクチンを強制的に接種させていたドイツはたった1件の発生に止まった。その点では日本の事情もそれに近い。それに鑑みて我が家でもND生ワクチンの接種間隔を極端に縮めさせていることは度々報告して居る通りである。

H 18 5 1. I,SHINOHARA.
No.19940