鳥インフルエンザ問題の今後(152)



茨城の鳥インフルエンザ問題で数紙が触れて居たが《600万羽近い殺処分は本当に必要だったのか》との疑問は《日本は本当にLPAI汚染国ではないのか》という去年の青森大会の疑問とも関係がある。実はその辺の追求こそが再発防止策につながる根本的な問題なのである。

逮捕、起訴された江口獣医師は官民共同の鶏病研究会の専門委員として、国の検査機関とも内々の情報交換が出来る、民間でその辺の事情を知り得た数少ない指導者の一人であったと思う。その彼が「殺処分の必要はない」としていたことを、茨城県も或いは国さえも自場への利益誘導と捉え、後の検体交換問題への伏線、更には闇ワク疑惑とも結び付けた形跡があるがこれこそ<下衆の勘ぐり>であると思う。そんな下衆心理では鶏界の指導者が務まる訳がないから、彼は環境汚染の事実を知って居たのだと私は感じていたのである。それゆえに彼には表面化した茨城株だけ殺しても問題の解決にはならないとの判断があったのだとうかがわせる。

茨城県に限らず野外環境で、実は他のH5ストレーンでの汚染が有ることは、我々が「動衛研のカラス」と揶揄してきたように、これまで各地方で幾ら野外調査して陰性だろうと動研の検査結果は違うことで認識させられてきた《疑い》である。それは検査方法が違うの、アンチゲンがどうのPCRのプライマーがどうのと色々云われても<県境が分かる茨城株ウイルス>にみるように恣意的部分が必ず感じられて来た。ただその恣意的部分を人為的闇ワクに被せ総て業者の責任だとして確定的に世界に流した小委員会の態度とその後の<強毒変異の惧れ>を煽ることで鶏の大量虐殺を正当化しているかに見て取れるその面々をどうにも信用出来なかっただけである。

更に茨城県知事が厚労省に怒っていた茨城株の人感染問題であるが、度々取り上げたように中国南部の老人が色々なインフルエンザウイルスの抗体を持っていたという話は今では誰も話題にすらしない当たり前の話である。ただ現在ではアジア各国に広く分布しているとされる無毒に近いH9N2も、当初1999年香港で二人の幼児が感染発病したことでH1〜H3以外に人のインフルエンザとしても認められている話を聞く(真偽は知らない)。いずれにしても人に対して全く無毒のウイルスまで問題にして大騒ぎしていたら人間は生きて行けない。人体が無数のレセプターを予め用意しているということは進化のためにそれが必要だからとの説がある。

H5N2自体は一昨年のテキサス州でのアウトブレークもあり、メキシコで防圧に成功しているからと云って、総てを過去のものと切って捨てる訳にもいかないらしい。しかしこと茨城株に関してはペンシルバニアの事例に戻すことはあるまい。繰り返すように、他の環境中の汚染を隠してこれだけを取り上げて大問題にすることが問題なのであり恣意的に過ぎるのである。それゆえに江口獣医師は殺処分に反対したと私は今でも思っている。

私の見るところ茨城問題の総括は一向に進んでいない。各紙が伝える「本当に殺処分が必要だったのか」の反省を抜きにしては話は進まないし、でっちあげに近い闇ワク原因説にとらわれて居ては事の真相も今後の対策も見えては来ない。

そんな時(とき)に、この業界に居る我々に対する外部からの痛烈な批判をたまわる『笹山登生の政策道場』の《とき》様達の存在がせめても言論の自由を感じさせるこの頃である。宜しくお願い申し上げます。

H 18 4 27. I,SHINOHARA.
No.19892