鳥インフルエンザ問題の今後(149)



先日の茨城での鳥インフルエンザに関する知事の記者会見で、これまで指摘し続けて来た小委員会の面々の目茶苦茶な言動をも、すべて権威者の言葉としてそのまま受け入れて来ていることが、この不勉強きわまる知事の、すべての行動のもとであることがはっきりした。成り行きで600万羽も殺させてしまったので、小委員会もいまさらあれは取るに足らない株でしたと素直に謝れなくなってしまっている。それどころか大槻教授など有りもしなかった強毒変異をいまも吹聴している。そして一方で鳥取大学の研究施設の予算が下りたことにニコニコ顔である。まさにこの男の正体を見た気がした。だってそうだろう、茨城株のように馴致つまり飼い馴らすことこそが真のウイルス対策の筈なのに「あれは馴化しているから危険だ」と養鶏家を集めて講演したのだから何をか云わんやである。

単独で生命活動をしないウイルスは不活性化は出来るが殺すことは出来ない。特にインフルエンザウイルスのようにあらゆる生き物に広く浸潤しているウイルスは飼い馴らして仲良くしていく以外にない。ただその中で、特有の種に致死的な突発的エマージングウイルスに対してだけは、やむを得ないから宿主ごと殺してしまおうとしているだけである。これはあくまで人間による非常手段であり相手を限定してかかることが何よりも重要の筈だ。この基本的なことを踏まえて考えれば、ありふれたED現象や軽い呼吸器症状の鶏群の中でたまたま発見されたそれ自体は無毒のウイルスの扱いで寧ろ正しいのは愛鶏園のほうであり、われわれ現場も当初から主張していたことである。

確かにインフルエンザウイルスは変異し易く、油断は出来ないと教えられては来た。だが環境中に無数に有ると思われるどの無毒株、低毒株が何時どのように強毒に変異するかは誰にも分かりはしない。そんな予測がつく位なら人のワクチンの準備だってもっと楽な筈だ。にも拘らず大槻教授らは、たまたま見つかったに過ぎない茨城株一つを取り上げて、それの強毒変異を確定調で吹聴した。そして研究所予算にニコニコする。こんなうさん臭い話はないではないか。これはワクチン反対、清浄国論の元での《喜田さんのワクチン》待望論みたいなものでどっちも将来、役には立つのだろうが取り敢えずのうさんくささは消えない。ま、これも鶏飼い百姓のヒガミでもあるが。

厚生労働省の前回の人間の調査も、坑血清を手に入れての愛鶏園の鶏に対する独自調査も、恐らくは同じ図式だろう。無毒株と分かって居てやって見ただけの話で、厚労省はなまじ70人が陽性だなどと発表したばかりに、ひどい風評騒ぎになった。愛鶏園は独自調査でもあり寧ろ黙っていたほうが良いと判断した。どっちも、うっかり調べるとひどい目に遭う好例だ。実態をまるで無視するのはマスコミも茨城県知事も同じで、不勉強の一字に尽きるが茨城株の見出しそのものも相変わらずの高病原性だ。これもコンプライアンスなのだろうか。さすが法治(放置)国家で一旦決めたらそのことに疑問を呈することすらしない。

そもそもの間違いは江口さんら現場の意見を無視して、この明らかな無毒株を法律の条文に照らして無定見に陽性というだけで殺させた小委員会の判断である。前述したように無症状陽転ということはその株は全く馴致しているとみるべきで、それがウイルス対策の究極の目標である筈だ。ところが常々我々にそう教えて来た彼等が、なんとそれを殺させてしまった。そしてそれが当然の結果として拡がりをみせると、こともあろうに闇ワク疑惑を打ち出して殺しのライセンスを得ようとし、ついには一致して強毒変異説を打ち出して煙に巻こうと画策した訳である。

この辺の事情は現地調査した茨城県の専門家は分かって居る筈だ。その云うことを全く聞かない知事さんはよほどのワンマンなのだろう。茨城で鶏を飼わなくて良かったと思う業者は多いのでは。

H 18 4 10. I,SHINOHARA.
No.19601