鳥インフルエンザ問題の今後(148)



特定の宿主があって、その生きた細胞の中でしか増殖出来ないウイルスは、それ自体は生命活動をしていないからウイルスだけを殺すことは出来ないというのが我々現場の人間のウイルス理解の第一歩である。特にインフルエンザウイルスのように太古の昔から、自然宿主といわれるガンカモ以外にも形を変えて広く分布しているようなウイルスを根絶することなど出来っこないことは皆百も承知の筈である。殺すことが出来ないウイルスは飼い馴らすより方法はない。それが馴致であり馴化であると永いこと教わってきた。

その中に今回のH5N1のような、エマージングウイルスに等しいものがが現れた。こうなるとウイルス自体は殺せないから宿主を殺すより無いとするのが摘発淘汰の趣旨である。だから92/40ECではその扱いをはっきり区別してきた訳だ。それを普遍的な環境中の弱毒株まで、確実に変異するとしてエマージングウイルス並に扱わせようとしたのが我が国の小委員会の面々である。

こんな馬鹿なことをされたら少なくとも鶏は居なくなる。そう感じた現場の人間は逮捕された管理獣医師以外にも大勢いたのである。ただそう考えたから闇ワクチンに手を出したろうというのはゲスの勘ぐりも甚だしい。魂の腐った奴らの考えることだ。

当時、業界が手に出来た人間用の簡易キットでは茨城株は検出出来なかったとされる。ならば何とか抗原を手に入れて見たいと彼等が考えたとしても異常ではない。そして調べた結果が陽性と出た。もともと危険性の無い無毒株でありエマージングウイルスとは無関係だとする現場の考えからすれば、これはそっとして置こうとするのが寧ろ普通の考えだったろう。報告すれば理不尽に皆殺しされる訳だから。

同様の反省は茨城県下の深刻な風評被害を耳にした厚生労働省側にもあったと思われる。何しろ偶然に発見されたに過ぎない馴致ウイルスの一つに陽性反応があったくらいで大騒ぎするほうがおかしいのだから。

研究予算獲得に血道を上げる学者達のまことしやかな宣伝を真に受けていたら業界は破滅しかねない。茨城県知事も県下の業者達の声を聞いて見たら良い。その独りよがりな考えで県警を指示する強権者としての人物像を鏡に写して見るべきだ。

H 18 4 7. I,SHINOHARA.