鳥インフルエンザ問題の今後(146)



さながら闇ワク摘発を目的にしたような実りの無い、当局の一連の恐怖政治によって鶏界は静まり返ってしまった。中でもせめてウイルスの性質を見極め、無駄な鶏の虐殺を防ごうと運動ししていた江口氏らが逮捕起訴されたとなれば、唇破れて歯寒し(伊藤氏)とはこのことで、我々風情までが意気消沈して将にカームダウンである。ただ惜しむらくは、せめて自場に累が及ぶ前、去年7月10日の坂東市に飛び火した段階くらいで声を挙げて欲しかったと思う。それでも無駄は無駄だったろうが。

茨城県は更に追い打ちをかけるように、愛鶏園に対する手当金を凍結するかも知れないとした。そんなものだけで愛鶏園がどうこうなるとは思えないが、一般に対しては瑕疵があれば本来の危険性とは関係なく約束は果たされないことを明示したようなものである。

それはさておき2000年11月の獣医免疫研究会のシンポジュームで河岡教授により明らかにされ2002年のNBIシンポジュームによって現場にも紹介されたリバースジェネティックス技術による半生ベクターワクチンとおぼしき家禽用ワクチンが北大などの研究グループによって開発されたと聞く(…分からないが)。ニューカッスル病猖獗時の経験では、実験室内でこそ発症を押さえたとされる不活化ワクチンも、実際の野外では斃死は防げても産卵低下までは防げなかった。特に呼吸器系統の感染症対策では粘膜免疫、局所免疫が最重要であり生ワクが必要になってくる。既にメキシコなどではポックスベクターのリコンビナントワクチンが使われて居るが、ポックスワクチンが普及している日本では効果がないという。それにインフルエンザウイルスの場合は生ワクの場合、新しい感染粒子が出て来ると変異する危険が有ると脅されているだけに、ウイルスが増えるのに必要な遺伝子NS2とやらを作れない半生ワクチンの開発は、その当時からの現場の渇望であった訳だ。しかしベクターということになれば、日本の場合は消費者の同意を得るのは政府以上に難しいだろう。そう考えるとやはり自然環境に於ける馴致と適切なバイオテクノロジーそれに既存の備蓄ワクチンの許可を待つ以外にない。

それにも増して重要なのはやっぱり国の施策だ。ようやく一般の消費者も気づき始めたが、今回のような健康な鶏の無駄な虐殺だけは二度とやめにして欲しい。それを避けようとした江口さん達の言動は、一つの筋書きのもとに悉く悪質な営利行為とみなされているらしいが、むしろ営利行為に見えるのは取引先、消費者を慮んばかるあまり、必要な時に必要な発言が出来ない生産者側の弱みというか卑屈な態度と云っては云い過ぎか。それが反って取引先には不誠実な対応と映るのではないだろうか。

H 18 3 25. I,SHINOHARA.