鶏飼い時事(じじい)…『大分総括が進んできたようだ』



江口さんが(茨城株なんか)殺すことはない的な事を云って居たことが紹介されてから急に理解が深まった。実際はカテゴリー10くらいの理解度が要求されるのに、カテゴリー1のH5,H7は高病原性だからとする薄っぺらな当局の形式論に止どまって居た我々のそれが、鶏病研究会専門委員としての彼の、云わば身を挺しての一言によって大きく蒙を啓かれた。最初から云ってるように責任のある立場の人が黙って居ては駄目だ。同じく、イセ会長の当局に要望したとする《鶏卵肉情報誌》最新号の寄稿文も分かり易い。何時迄も大槻教授に騙されているこたあない。

だってそうでしょ。彼が1983〜4年に渡り鳥から採取したH5N3は25経代で強毒に変異したとして茨城株も同じ惧れがあると脅し続けているけど、彼の実験株は当初、鶏に感染させようにも罹りもしない水鳥の株だったという。それに対して今度の茨城株は当初は確かにペンシルバニアや中米を荒らし回った一味ではあるけれども、その後飼い馴らされて、鶏にさえ無抵抗で受け入れられて居る馴致無毒株だ。これから変異するのではなく散ざ変異し尽くした燃えっかすに過ぎない。こんな株は抗体の型さえ合わせれば自然界に無数に発見される筈だ。それを更に、そのような家禽に対しての無毒株も公衆衛生上は油断がならないとする説は、たまたま特殊な抗原を使って発見出来るような無毒株を、発見したからと云ってその宿主を今度のように皆殺しを図ったら鶏も野鳥もいなくなり、その辺のカテゴリーとなると最早実際的ではない。社会的にも屁理屈に近い。

当初は強毒発症したH9N2も今は大きく3系統に別れて無毒化し、其のうちの一つが韓国で浸潤しているそうだし、人間のスペイン風邪や香港風邪も日本で年間15000人も死ぬとか云われても昔の面影は無く強毒変異の恐れから事実上除外されている。そんな歴史的事実と比べても現実の茨城株に今更先祖返りの可能性は実験室内であった話も聞かないし現実は知っての通りだ。

確かに《ウイルス絶滅論》の立場からはマスキングによる強毒ウイルスの潜在化は問題だろうが、ワクチンをやろうとやるまいと、そんなことは自然界のウイルス同士でとっくに常習的に起きて居る問題だ。いくら我が国の学会が反対しようと、全く違う亜型の間でさえ、中和抗体ではなく細胞障害性のT細胞による交差免疫が成立するとの確認さえあるとされる。そこまで云わなくても、すくなくともこれまで現場で干渉、競合排除を利用しようとして研究者に相談しても一顧だにされぬものの、実際は多くの亜型が存在するIBなどで、型の違う不活化ワクチンでスペクトルを満足させても効果はなく、単一型の生ワクの頻繁接種のほうが格段に秀れて居た体験は皆持って居る。

話は違うが、かつて人獣研のQ熱コクシエラ騒ぎで鶏界は酷い目にあった。それに抗議した業界とお歴々が今回の茨城騒ぎでまた酷い目に遭った。そのシゲタということになると《喜田さんのワクチン》を待てという話にもなるかと久しぶりに不見識だが腹を抱えた。余りにも複雑怪奇なトリフル問題よりよほど分かりやすそうで(笑)。

H 18 3 16. I,SHINOHARA.