鳥インフルエンザ問題の今後(136)



真相の解明と江口さん達の名誉回復については全く悲観しては居ないが、養鶏協会も獣医師会も鶏病研究会も他の関連団体も何故黙ったままなのだろう。事ここに至るまで黙って手をこまぬいて居るのは少し狡すぎないか。日本の法廷では立件されれば有罪は確定したようなもので様子を見て居ても同じことだ。云うことは今云うべきである。

国の基本姿勢の《清浄国論、撲滅論》は、国の段階では建前に過ぎないが、末端での実行部隊は常に暴いて撲滅を期すのか、見て見ぬ振りをして清浄国論を守るのか苦しむ事になる。そこで何よりも大切なのは実際の危険性を見抜くことであり、臨床でのプロの目と叡知が何よりも大切な所以である。動衛研は云わずもがな、江口さんは鶏病研究会の専門委員でプロ中のプロである。業界紙の皆さんも何故こうなる前にご本人の意見を聞こうとしなかったのだろうか。伝染病対策で一番大切な官、学と業界の協力態勢を癒着と捉えられては為す術もない。

鶏が咳きをするのも人間が咳きをするのもインフルエンザに限ったことではない。それまで瑕疵として結び付けられたら鶏など飼っていられない。茨城600万羽の壮大な実験観察の結果は完全な無毒株でありアウトブレークは存在しなかった。<清浄国論>の建前で行けば発症もしないものを暴くべきではない。国益を損ずるだけである。それが良識であり、繰り返すようにこれまで国はそうして来た訳である。したがって無毒の茨城株が茨城半国から飛び出さないのも、国の良識が辛うじて働いて居る結果である。ここまで云うことに逡巡せざるを得なかったが、もうやむを得ない。

国の清浄国論に頭から反対する我々鶏飼い百姓と違って、業界指導者の立場の江口さん達はそのことをも充分承知で行動される。掘り出しても調べたいとする探求心と、建前の清浄国論の扱いとのはざまで苦しんだと思う。それが共謀と取られては如何ともしがたい。

それを受けた動衛研の技師の心情も察して余りある。江口さんも動衛研を巻き込む結果になったことを一番悔やまれていると思う。しかしそれによっても我々は今回の茨城株を含め、無毒の隠れたウイルスの発見は容易なものではなく、その道のエキスパートでも偶然以外は不可能に近いと改めて知ることになった。江口さんならずとももうこんな茶番劇は沢山だ。発症もせず、当面の危険性もない無毒株など放って置くのが<清浄国論>の実態だったのではないのか、いやさそれこそが清浄国論の扱いそのものだろうに。本当に日本に鳥インフルエンザウイルスが存在しないと考えて居るものなど、だまされて居る素人の国民以外いるものか。

清浄国論が額面どおりに働くのはアウトブレークの場合だけである。そこではワクチン議論も必要になる。このところ私自身ワクチン問題からずれて居たのは、当面の問題が茨城無毒株の虐殺阻止だと思い込んで居たからである。それがこともあろうに、業界の叡知と良識の摘発というとんでもない方向に向かった。それを黙って見て居る養鶏家と養鶏団体は一体何なんだと思う。

H 18 3 2 . I,SHINOHARA.
No.18979