鶏飼い時事(じじい) …『断固争うべき -続々-』



茨城県警による管理獣医師の逮捕を理不尽だとする発言は今のところ少ない。milkman様くらいである。特定農場付きの獣医でなく、一般ラボの場合でも獣医には顧客への守秘義務は一切認められないのか。今回 動衛研に類が及べばその辺りも争点に出来そうだ。自らの問題として、当然獣医師会も早々に一言有ってしかるべきだが、何しろそのトップが御用学者として官憲側ではお話しにならない。獣医師会にも武見 太郎出でよ である。それにしても関連業界の無力さはどうしたことか、まるで《羊達の沈黙》である(その映画のアンソニー・ホプキンスの役ではないが、最近では公のなさり方も少々悪く勘ぐらないと実態が見えて来ない気がする)。そればかりか事実上の被害者を更に貶めるような言動さえ目立つ。やはり我々の百姓時代と違って、団塊世代以後はそれぞれ個の時代になってしまったようだ。

茨城株が問題になる以前に、繰り返すように1996年岩手、鹿児島のLPAI発症前後から、産卵ピークが出ないとか、変な呼吸器症状が出るとかの軽い症例は各地で散見された。そして実際1997年の調査では東北以西にH3,H1の浸潤が認められた。しかしどうも家衛試の記録としては残って居ても、国としては未だにはっきり認めて居ないようである。それらを悉くガセネタ扱いして来たのはむしろ国のほうだったとの印象が強い。また実際民間ラボの調査でも見つかることはなかった。人間用のA型検査キットの流用位では多岐に亙る鳥インフルエンザの抗体検出などもともと無理だったのは家衛試の研究資料を見ても十分想像出来る。

だから症状の無い無毒のLPAIの摘発など民間はおろか国のほうだって想像もしていなかったろうと思われる。実際H3,H1の従来型LPAIでも岩手、鹿児島の例ではかなりの症状が出て居る。その辺りを勘案すれば今回の茨城問題の初期段階で、当該獣医師の取った態度は当然であり、水海道での小委員会の殺処分決定を知って、現場とそれまでの国の実際の対応を見て来た者ほど、私自身そう訴えた通りこれはとんでもない間違いで取り返しが付かなくなると感じたであろう。

小委員会の決定とそれを受けた茨城県の対応は、それまでの国と現場の在り方を一変させてしまい、永年培われて来たプロフェッショナルな信頼関係はマスコミを通じて危険な癒着と捕らえられてしまった。以後は知っての通り、我々から見ても尊敬に値する人達ほど魔女狩りに会い、不正の烙印を押されてしまったのだ。これまでの経験から、茨城株如きを大騒ぎして臨床面それに財政面でも、まるで素人集団の小委員会の手に掛かったら飛んでもないことになるとの危惧を持たないとしたらそれこそ全くのドシロウトである。事実、健康鶏600万羽の虐殺と有能なプロ達の逮捕にまで発展してしまったではないか。

その危惧があればこそ逮捕された専門家達は、本質的にはそれが正しい判断として行ったものと思う。それでより罪が重くなるとしても、それもプロ根性である。アウシュビッツから逃れるユダヤ人に旅券の発行をした日本人の行為に通ずるものさえあると百姓の私なら考える。そうでなくても優秀な人材の足りない我々の業界にこれ以上の犠牲者が出ないことを祈りたい。況んや頼りの動衛研を引っ張り込んでどうするのか。私の頃ならお世話になった先生達はみんな居なくなってしまいかねない。恐ろしい世の中だ。

H 18 2 28. I,SHINOHARA.
No.18915