さて、小委員会がここまで無理をして闇ワクチンに拘る理由は既に何回も記した。 水海道で偶然ウイルスが化血研によって発見された時、それが中米株であったことと闇ワクのガセネタが彼等の中で結び付いて先入観になってしまったのだろう。まだ真偽の程は分からぬとは云え《OO議員発言》と全く同じ構造と云える。わざわざ振り込まずとも(中米からの移入)現金のほうが手っ取り早い(隣国からの飛来)ことを忘れてしまったのである。 最初の殺処分で「これで続発はない」と言い切った喜田委員長のコメントはこれを裏付けるものである。そして実際にはイセのウインドウレスに飛び火した。そして9月2日の小委員会での爆弾発言、例の<消去の結果>の偽ワク疑惑の公表であった。いくら清浄国論を奉ずる国でも、かくも大量の事実上の健康鶏を処分し続けるのは無理がある。法的にも何らかの補完が必要になる。そこで疑似患畜として摘発可能な不認可ワクチン条項を利用し、責任を業者側に被せたのである。 そしてその結果は何と600万羽、茨城県内の飼養羽数の半分にも及んだ。国も小委員会も茨城県も《とき》様の云われる「無謬性の担保の積み増し」の必要にせまられ、その為の世論操作もこれまた必要となった道理だが、その弊害と犠牲の何と多いことか。 獣医というのは畜産界では学識良識の存在であり、その道のプロである。私達のような古来型<阿呆の鶏飼い>から脱するために養鶏場や養豚場の師弟に教育を施そうとする時、先ず視野に入れ勧めるのが獣医としての道である。その存在は金銭的な癒着などではなく官民の知識、技術、情報の伝達啓蒙に欠くべからざるものであった。それを今回の事件で、事実上その頂点に立つ一握りの北大閥の獣医達が粉々に打ち砕いた。私の親父も明治43年卒の獣医だが、それも含めてこのHPで「獣医は馬鹿か」と云って関係者の顰蹙を買ったことがある。しかしさすがにもう限界である。皆が立ち上がらないと産業関係の獣医は駄目になりプロとしての誇りも業界の良識も消えてしまう。 2002年NBIのシンポジュームで来日したイタリアのカプア博士は防疫の為には民間獣医の協力が不可欠だと説いた。養鶏場にとっても、その存在は教育程度の証しであり良識の因り所でもある。逆にそれが在るがゆえに悉く悪と見なされた今回の茨城問題はあくまで異常であるというほかない。 実際、この問題が起きてから民間のラボラトリーなども立ち往生している。うっかり相談にも乗れないのだ。清浄国論に則り、さながら官憲と化した小委員会の面々がトップでは、一切のプロとしての良識が通用しないのだ。ひとり報道された江口、前田氏だけの問題ではないのだが、自ら闇ワクのガセネタに躍らされる養鶏業界は頼むに足らず<天 勾践(コウセン)を空しゅうする勿れ>とさながら児島高徳の心境で嘆くばかりである。ほんとに范蠡が現れてくれないか。 H 18 2 28. I,SHINOHARA. No.18906 |