鳥インフルエンザ問題の今後(134)



業界が指摘するように疑問の多い茨城株問題であったが、どう考えてもそれらの疑問をそのままにしての安全宣言では釈然としない。そしてその疑問を解くカギは、取って付けた様な小委員会の公式発表よりも要所要所で漏れて来るその研究者達の本音の部分にあり、それを汲み取ることも重要なことだと思われてならない。その個々の疑問を云々する前に、業界が既成の事実ととらえている茨城でのAI大発生は果たして大発生だったのかから検証する必要がある。

大槻教授は初発の水海道でのEDはIBによるものだろうと述べていた(鶏卵肉情報)。また喜田教授はAIの摘発で正確を期するためには3点セットが必要だとしていた(小委員会)。これらを要件とするなら茨城株は全くの無毒株であり、発症のないものは発生いわゆるアウトブレイクとは云い難い。またH5,H7がすべて強毒ではなく、その多くが無毒ないしは弱毒であると説明していたのも彼らであるが、厳しければ先進的だと勘違いしたままの我が国の法令、つまりその全てを高病原性と規定して摘発の対象としていた云わば未経験から来る大きな過ちを正さないまま、いきなり拙速な殺処分を敢行したことが、国際的にも誤解を招いた今回の事件の始まりであった事は間違いなく、この根本的な過ちを是正しないままの場当たり的変更と恣意的解釈の繰り返しが無害の鶏600万羽殺処分の悲劇につながったと云っても過言ではあるまい。

しかし小委員会は、それを是正する機会を悉く逃し、逆に殺処分を正当化する為に、隣接大陸事情を無視したでっちあげに等しい闇ワク疑惑、更に無数に存在すると彼ら自身も述べていた自然界の無毒株のうち、たまたま引っ掛かった茨城株の、分かっただけでも7カ月の観察期間を無視して、同じ2カ月程度のペンシルバニア事例を勝手に2年に引き延ばしてまで、その強毒変異を煽るなど大槻教授らの一連の発言は、彼らのそれまでの言動と矛盾する事ばかりである。

このように彼らの発言をたどって吟味していくことで、案外筋としてつながることはこれまで述べて来た通りである。そしてそれを元に考察を進めて行けば茨城の特定区域を飛び出さない茨城株の謎も自ずと解けて来るものと期待するのである。何れにしても茨城株を額面通りの高病原性鳥インフルエンザの大発生とみるか、前記学者達の本音に沿って、多くの野外無毒株の一つが、たまたま抗血清と合わせることにより大量に見つかっただけで、これを一つの新発見、進歩と捕らえ、摘発目的でなく冷静に全国調査を行えば茨城株は無論のこと、調査実績の有るH1,H3のみならず、韓国浸潤型その外多くの類例が見つかるものと、あらゆる亜型の抗体を持つとされた南中国の老人の事例などからも推測出来そうである。

前回の1997年の家衛試の調査はHI試験でも4倍程度の非特異反応と紛らわしいところまでしきい値を下げてのものだけに、その技術水準を地方の家保にまで拡げることは実際は不可能であろう。やはり喜田教授自らが云われる、発症を含めた3点セットを対象とする以外ない。茨城の事例を大きな教訓として、今後は独りよがりではなく、せめて世界の情勢にあわせ、世界三機関の方針にも沿う形が望ましいと思うのである。

H 18 2 22. I,SHINOHARA.
No.18765