鳥インフルエンザ問題の今後(129)



日本一の養鶏県である茨城はまた関連業者も多いから当然知り合いも多いが取引などは支障を来したままになっている。電話でも多くを語りたがらない。ただ風評被害の最たるものは、ここに来ると茨城株の人への感染懸念だという。これまでも、人型と鳥型の差はあっても、亜型そのものは同じ型が人、豚、鶏夫れ夫れから検出されてきた。H1N1,H3N2がそうである。

南中国の老人からはしきい値さえ下げれば、あらゆる型の抗体が検出されると紹介された。無論、中には非特異的な反応も入って居るとされる。実際南中国ではHもNも型が違うのにT細胞由来の交差免疫が認められて、日本の獣医学会誌にも掲載された。つまり人畜無害なインフルエンザの非特異的なものを含めた抗体保有などは人類がこの地球上に生存するために必須の条件に外ならないのである。映画で襲来した異星人もそれ故に地球征服に繰り返し失敗した。(笑)

茨城株も所詮そんなウイルスの一つに過ぎない。こう云うと学者達は、さんざ煽った手前スペイン風邪を見ろ、鶏に無毒な株でも危険な変異をすることがあるのだ、と文春3月号の日垣さんの云い方にあるように、ほとんどリスクのないのを良いことに、やたら警鐘を鳴らす。所詮、我々鶏飼い現場のものがこんなことを云っても誰も信用はしない。だが繰り返すように医者と動物飼いは経験上インフルエンザには強いのだ。鶏飼いの子供は卵アレルギーにも強い。まさに《とき》様の云われるように病気の主体は宿主なのである。しかし茨城の現実は深刻らしい。陽転を恐れて、養鶏場や処理場の従業員が辞めていく。

免疫には非特異的なものが基礎にあって、いろいろ競合したり交差したりして、例えばインターフェロンなどの産生をうながしながら抵抗力を付けていこうとするのが昔からの現場の考え方だが、この基礎免疫(NBI館沢さんの云う)という考え方自体、日本の獣医学者はなかなか取り上げてくれなかった。本当は無害な株の抗体を持つことは、非特異的あるいは広い意味での免疫交差で、特に今回は抗原的違いはあっても当面の敵H5N1と同じH亜型であり、その防御には下手なタミフルよりずっとましであるとするのが考え方とすれば本筋である。

実際有りもしなかった茨城株の強毒変異を未だに主張する大槻教授らの言動こそが、この恐るべき風評の元にあることを知ってほしい。したがってその超一流のお仲間達で構成される小委員会の面々も誰ひとり、この風評を止めようとしない。そのことが又、その風評被害を無限に拡げ、とどのつまりその云うことをひたすら聞いて方針を立てて来た茨城県自体も窮地に立たされているが、このことは同時に、法定受託事務を司る地方自治の有り方自体を問われ兼ねない問題であるとも思うのだ。

H 18 2 16. I,SHINOHARA.