鳥インフルエンザ問題の今後(127)



いよいよ本格的インフルエンザシーズンの到来である。鶏とても例外ではなく呼吸器病の多発期だ。その移動は極力控え、監視を怠らないようにさせている。

茨城県の陽性鶏処理の問題も行政の自縄自縛の形になっている。その元は一にも二にも大槻さん達学者の無責任な言動にある。彼らは未だに茨城株陽性鶏の強毒変異を叫んで、変異の期間を2〜3カ月として居たものを、わざわざ1〜2年に延ばしてまで恐怖を煽って居る。それならば何故、その処理に困ったとはいえ監視鶏の県外搬出まで画策しようとするのか。その前に、モニター鶏を置いて感染の有無を調べたことはいったい何だったんだろう。その結果を素直に認めるならば、強毒変異の惧れはなかったとするのが当たり前ではないのか。変異の惧れが無くなったから搬出を許可したのではないのか。

茨城株は当初こそ一過性の産卵低下があったとするものの、全くの人畜無害の現状では何も問題はなかった。ただ仮にもH5の名が付き、それが強毒に変異すると脅されたから殺処分に従っただけである。そして6カ月以上経ち、実際そのような変異はしなかった。逆に産卵低下もなくなり成績はむしろ向上してきてさえいた。そして最後の詰めのモニター鶏にも異常は出なかった。繰り返すがこれ以上の留め置きは無意味であり、放免しても危険性はないと判断したからこその搬出許可である。

人間の場合も、絶えず未知のウイルスとの接触による抗体の獲得があるからこそ地球上で生き続けられるのであり、その為に生体は無数のレセプターを持つとさえいわれる。茨城株以外にも我々はいろいろな未知のインフルエンザ抗体を有して居る筈だ。そして結果から見て、実際間違った指導ばかりして来た学者達にはこの辺で責任を取って貰うというのが筋である。ところが彼らと来たら金輪際間違って居たなどとは云わない。事ここに及んでも未練たらしく強毒変異を叫ぶのである。それなら官の手ですべて殺処分するよりないではないか。県外持ちだしなど以ての外である。こんな矛盾さえ彼らは分からないと見える。誠に以て始末が悪い。こんな人達のおかげで数百万羽の鶏は殺された、と云いたくもなるのだ。

茨城県の対策でどうにも分からないのは各地方共通の標準株によるAGP検査で陰性なものを何故茨城だけ無理に株を替えてまで摘発するのかということである。もともと世界共通の懸念であるH5N1の流行株に全く反応しないような抗原なら問題にするほうがおかしいではないか。現に備蓄ワクチンが効かない懸念を云う学者が、その株の強毒化を問題にするのがおかしいのである。またそのワクチンが効かないとする理由も、単にUSDAの論文を引用しただけで、しかも幼雛時の一回接種というのは、このワクチンの使用基準から見ても効きが悪いのは当然で、野外では(特に幼雛では)2回以上の接種がNDの場合でも常識といえる。ちゃんと野外でも有効な使い方さえすれば効かない筈が無い。何よりも日本で承認されたワクチンは肝心のH5N1に対して山口株の場合2回接種で10の6乗でも排菌を押さえたとされる(動衛研)ので、どっちでもいい茨城株と混同されると業界の誤解を産んで始末が悪く成りかねない、ワクチン関係者もきっちり反論すべきである。それは兎も角、そんな特異な抗原を茨城だけ使うことに抗議すべきではなかったのか。他府県と同じ方法で陰性ならば陰性であるとして頑張るべきだったのではないだろうか。

そして農水は異例のLPAI摘発の為の全国調査を摘発淘汰に対する補償の予算も持たずに始めさせた。ある学者が無責任にもLPAIの摘発淘汰はアメリカの州などと同じで、世界が日本のやり方に追随し始めたと云うが冗談ではない。予算の裏付けのない淘汰に米国ならずとも産業側が従う筈が無い。対する充分な予算があっての話で、予算が無ければワクチンは当然だ。日本のやりかたは援助する相手の東南アジアの国より酷いではないか。大体補償を良心的補助と混同すべきではなく補償はあくまでも補償である。

もう一度云う。あくまで《茨城株の強毒変異》を云うなら、その県外はおろか処理場への搬入もさせるべきではない。すべての責任は行政と学者が負うべきものである。互助基金の増額など筋違いである。損害請求の行政訴訟を起こすべきだ。どっちみち養鶏場は助かりそうにないのだから。

そんな時、未だに尾を引く闇ワク問題は全く馬鹿な話で、香港が最初に取り入れたワクチンもメキシコ株であるし、中国大陸そのものの情報が全く無い中で、それを抜きにした考察など全くのナンセンスだ。それにこれほど鶏に馴致した株が、繰り返すように、もともと媒介者であるムクドリなどの漂鳥に影響しない訳は無い。偏西風に乗れば目と鼻の先の大陸と日本、黄砂に乗ればウイルスだけでも充分飛来可能であろう。そのことに一言も触れぬまま闇ワクのせいにするのは本当に馬鹿げて居るしそれを真に受ける我々もどうかしている。

さてかねてから世界三機関が提唱していたようにEU諸国も鶏の病気は鶏の段階で防ぐ意味と、これまでの家禽類の無用な虐殺への反省からワクチンに対する理解が急速に高まって来た。日本としても世界の潮流に逆らっていると、恐らく数年後には種鶏の輸入さえ支障を来すことになりかねない。我が国の行政のことだから、実際そうなってからでも、数年のブランクは当たり前だろう。そして鶏界は壊滅しかねない。

H18 1 31. I,SHINOHARA.
No.18165-18166