鳥インフルエンザ問題の今後(125)



茨城 森屋農場の77万羽の処理が始まった。真っ白に卵が並んだ鶏舎の鶏達が次々運ばれて行く。何とも嫌な気分である。普通に経済寿命を終えた、いわゆる廃鶏を出すのも実は未だに余り良い気持ちはしない。まだ乳臭い20カ月未満の子牛を、それでなければと云って食って仕舞う。こんなに惨い人間の気持ちで良いんだろうかといつも思ってしまう。<モウモが見て居る白い雲、モウモは生まれた国知らぬ、モウモが寝て居る青い草、モウモは母さん思い出す>そんな童謡はもう出て来ないんだろう。

感傷だけで云うのではなく、茨城株陽性鶏達は強毒変異の懸念だけで殺されて居る。それを決めた学者達はH5とつけば高病原性ということになっているからやむをえずとは云わない。あくまで強毒変異は既成の事実とばかり煽って養鶏家に協力をせまる。まるで偽善者である。彼らの言い分では径代変異を繰り返す形で野外の弱毒株が強毒化するの一辺倒だ。確かに彼らの実験室ではそうだったかも知れない。ただ野外では変異を繰り返す有る程度の大きさの群と時間が必要になる。

ところがトルコでの現実はどうだろう。WHOの云う通り、今やH5N1は短期間に直接、農村の庭先養鶏を襲って居る。まるで違うではないか。また彼らは二言目には鶏に馴化した茨城型は自然には存在しないといい、茨城に自然発生したのは不自然で人為的なものと言い切り養鶏家同志を疑心暗鬼の渦中に放り込んだ。

しかし繰り返して来たように隣国では以前から中米株をワクチンとして使って居る。ニセワクもしばしば話題になるその隣国の事情は皆目分からないときている。その時期偏西風に乗れば大量の黄砂と共にムクドリなどの漂鳥に頼らずともウイルスだけでも飛んで来兼ねない。茨城だって立派に黄砂は降るはずである。そのうえ茨城での漂鳥の調査は出来ていない。逆に闇ワクでなければならない理由は何処にも無いのである。また茨城で発生したとするのが正確ではなく、たまたま執拗なEDの追求で偶然にウイルスが発見されただけである。韓国の場合もEDが拡まったことから外国のチームによって浸潤が明かにされたという。

茨城問題が起きるまでは人間のA型用の簡易キットが引っ張りだこだった。本来人間でもそれで間に合わせていたものを鶏だけ微に入り細に亙るのは不自然というもので学者たちの興味以外の何物でもない不必要なものなのだ。それをすっかり標準化してしまったのが茨城県方式である。こんな実験室みたいなやりかたをされたら堪ったものではない。そして不自然、不自然というが一番不自然なのは、特定の範囲を飛び出さないウイルスである。それまでも養鶏場のニセワクのせいにする学者のずるさは何としたものか。

何れにしても既成事実としては彼らの主張とは逆に茨城株は強毒変異しなかった。にも拘らず学者達は執拗に強毒化を主張し恐怖を煽り現在もそれを続けて居る。そして事実に反するそれを受け入れ講師としても歓迎しているかに見えるのが、彼らのやみくもなでっち上げ的ヤミワク疑惑に未だに取り付かれて居る我々の業界ではないのか。茨城株は馴致した安全な株か、それとも大槻教授のいう馴化した危険型か(鶏の研究2月号)、しかしこれで証拠は消されて仕舞う。だが韓国の例を見るまでもなく型の違いはあってもEDは残る。一方バックヤードヘンを直接襲うトルコ型HPAIだって時間の問題。そう考えるのがむしろ自然だと思う。

H 18 1 26. I,SHINOHARA.