鳥インフルエンザ問題の今後(121)



天は自ら助くる者を助く God helps them that help themselves と洋の東西を問わずそう云うが、我々の業界はとうとう見方によれば茨城一県に過ぎない鶏を救えず見殺しにしてしまった。私自身も何やら自責の念に駆られて年が明けたらHPをアップする気にならなかった。そして事態はより悪化する方向にあることは間違いない。

どの先進国でもLPAI対策の概念ははっきりして居る。補償しての摘発淘汰か、ワクチン接種かの二者択一である。何れにしても家禽の病気は家禽の病気として片をつける、それが原則である。そして相手が経済動物であるから、どちらのやり方が財政、経済の負担が少ないかで決められる。そこを素通りし、殊更ウイルスの一方的強毒変異を強調して公衆衛生への懸念を煽ったのが清浄国論の為の御用学者達だった。そして始末の悪いその論調が、経済性を論議することもなく立場上それに抗すべき業界までも侵食してしまった。

茨城のH5N2にしても、その病原性がほとんどないLPAIであるなら、見つからないだけで環境中に無数に存在するインフルエンザウイルスの組み合わせの一つに過ぎない。その危険性を説いて回るのは、直下地震を懸念して首都を空にさせる云い方に等しい。無いとは言えぬが、それだけを問題にしたのでは何も出来ないと云うことである。

マスコミは茨城のケースがH5N2に人が感染した初めての例だと騒ぐが、南東アジアなどの老人は、既にあらゆる亜型の抗体を保有していると以前から報じられて来て居る。たまたま分かっただけの九牛の一毛だけをとりあげて大騒ぎするのはおかしい。況んやインフルエンザに罹った従業員は鶏舎に近付くななどと云われたら養鶏場はお手上げだ。そんな馬鹿馬鹿しい事まで取り入れて行こうとするなら、自ら助くどころではなくなる。

業界は昨年6月以来の事柄をドキュメンタリーにして世に問うて見たらどうか。そこでは強毒変異だけを懸念するだけで、基本的なコンセプトも方針もなく、行き当たりバッタリで事を決め、尤もらしいデタラメ発言を続ける御用学者達の言動が浮き彫りになるだろう。そして其の際槍玉にあげられ汚名を着せられた養鶏場は真意を明かすべきだ。社会的に信用もあり自主的な努力を重ねて来た養鶏場ほど魔女狩りにあったのは同業者としてどうにも解せないで居る。普段の自助努力が悉く裏目に出た真相を知りたい。

さて今度問題となった茨城での人感染だが、鶏にも人にも全く症状を現さないで親和性も高いとなると養鶏関係以外にも抗体を持つ人が多いだろう。感染自体も人の方が先だった可能性もあるらしい。現に人型と同じH1,H3亜型は一時期、鶏の陽性例も多かったとされる。どっちが先かは実際には分かっていない。

そこで今後だが人にも感染者がいる茨城株が茨城だけに止まって居るとするのは奇跡的と云うより作為を感じる。全国展開の実態があっても一向におかしくないし其の方が自然である。またED(産卵低下)騒ぎが出て来たり、全国的サーベイランスが茨城方式に替わればお取り潰しは全国に拡がるだろうし、その懸念と茨城での陽性鶏群淘汰とはあまり関係ない筈である。従って茨城を先例とせず、特殊な事例として処理する為には官の助成に頼らず、業界挙げての茨城支援で自ら助けるべきだったと勝手に思うのである。このままでは確実に明日は我が身だ。

H 18 1 13. I,SHINOHARA.
No.17710