鳥インフルエンザ問題の今後(119)



SARSの場合もそうだが、本来は動物それぞれの感染症ウイルスが、種の壁を越えて人間に取り付こうとすると、体中の細胞から産生放出される炎症や免疫反応に係わる生理活性を持つ液性因子、つまりサイトカインが一斉反発して大増殖し、侵入者を撃退しようとして高熱を発し、勢い余って自らの臓器を傷つけてしまう。もともとそのような暴走を防ぐ役割を担うインターロイキンも無力化するため、人為的にステロイドを大量に投与してサイトカインの産生を押さえようとする。その為今度は他の細菌などへの抵抗力がなくなって更に重症化する。これが人型に変わると親和性が生じて反応が和らぐだろうから、パンデミックになれば死亡率そのものは1〜2%になると見られている。しかしそれでも国民の30%が罹患すれば60万人位の死者が出る計算をしている。

とまあ 若い人程、重症化する事例についてこんな解説を昨日も指導医師から受けたところである。本当にそんな事態になったら鶏どころではなくなる。最初の波が来る2〜3ケ月を何とかやり過ごして、幾分でもマイルド化するだろう次の大波に備えるべきだ、などと教えられる。

改めて云うまでもないが茨城の養鶏にとって今年はほんとに受難の年だった。全くの人災としか思えない。200万羽以上を犠牲にしてまで守ったのは《清浄国論》であり、所 秀雄先生の批判される清浄化論、ウイルス撲滅論である。そのための財政支出を最小限に押さえたのが外ならぬウインドウレスの《閉鎖鶏舎論》であり《安全鶏舎論》であった。もとよりこれらは全て何の根拠もない空論に過ぎない。こんなことに幾ら反論してもラチはあく訳がない。空論であることはとっくに承知の上での夫れ夫れの《論》だからである。委員会と事務局も都合が悪いことは互いに相手のせいにして擦り抜けたと我々が感じたことが多々あった。が、しかし結果的には業界側はスキャンダルにまみれて敗北した形である。報道では、いわゆる検査妨害なるものの摘発対象もどんどんエスカレートして、すべての日齢別グループからの検体提出がなされることまで要求されるらしい。つまりこれまで陰性だったものが陽転したのはすべて養鶏場側の悪意によるものだと印象付けるやりかたというか報道になってしまっている。もはや末期症状である。

過去のニューカッスルに比べると今回の鳥インフルエンザ問題ははるかに複雑である。夫れ夫れの立場で主張を繰り返しているだけでは何の解決点も見いだせない。況んや我が国のように頭にH5,H7とつけば即摘発淘汰というだけではとても実際的ではない。やはりあらゆる段階で比較検討し決断することが必要不可欠である。茨城株についても(1)変異の危険性と強毒株侵入の際の抵抗勢力としての価値 (2)弱毒株を残すことによる遺伝子再集合やサイレントエピデミックと、外部から侵入した強毒株突発の危険性の比較(3)実態を踏まえた清浄国の見直し論議 (4)摘発淘汰に対する財政負担の問題などについて分かる形での考量、較量がどうしても必要であり、それが一切なされぬ小委員会では存在価値がなく、あまつさえ密室談義のうえ黒塗りの議事録では、到底納得することが出来ない。

国や委員会の意向としては茨城の汚染鶏群を早く根絶して清浄化したい魂胆が見え見えだが、そんなことが果たして可能かどうかさえ議論しないで、そう決めつけてしまっているようである。今回のモニター鶏設置で一群で陽転すれば全鶏舎淘汰の方針など焦り以外の何物でもなさそうだ。

H 17 12 26 I,SHINOHARA.
No.17462