鳥インフルエンザ問題の今後(118)



もともと最大の被害者である茨城県の養鶏場が、すっかり悪者にされてしまった。行政面での対策指針はあっても、本来、鳥インフルエンザというウイルス病に対する考え方の基準が何一つ無い。

6月下旬、水海道で6件の発生が報じられた時は疫学的に同一の発生と見なされた。それが今ではどうだろう、一つの養鶏場内のそれぞれの鶏舎なりヒナのロットが別々に扱われて検体の出し方で非難されている。これではワクモやトリサシダニなどの外部寄生虫並の扱いである。人間のパンデミックの場合なら数日で全世界を駆け巡るとされるウイルスを相手にしているとはとても思えない。もっと不思議なのは、これだけ識者がそろって居るのに誰もそのことに言及しないことである。

ある養鶏場が陰性と分かって居るものに検体を差し替えたとして告発されたというが、そんな確信が養鶏場側にあるのだろうか。若い鶏と老鶏で発症の差はあるかも知れない。しかし感染そのものに差がある訳ではない。もともと一養鶏場で10羽ずつを抜き取り検査するという筈が、どうしてこうもワクモ並になってしまったのだろうか。

私自身も知りたいのだが、養鶏場側がゴマをしてまで検体を差し替えたとする理由が、よく分からない。何ゆえ若い鶏のほうが検査に引っ掛からない?とするのだろうか。名にし負う鳥フル相手に、繰り返し検査するとなれば、いずれ五十歩百歩だと思うのだが。

この鳥フル問題で、例の世界的に報道された闇ワク疑惑以来今日に至るまで、日本の養鶏場の性悪説(しょうわるせつ)は抜き難いものとなった。何を云っても信用されないのは困ったことである。トレサビリティなんかに血道をあげているのが空しくなってしまいかねない。

このところ茨城県のコメンテーターが畜産課長さんから農水部長さんに代わった。そんなことでさえ、問題があらぬほうでより重大視されるようになったのかと些か気になってしまう。

兎にも角にも茨城県では既に200万羽以上の鶏を人為的に殺した。最近の傾向を見れば、この感染が収まるとはとても思えない。もはや一般論ではなく、茨城のこの株を特定して防疫面、経済財政面、そしてその危険性についても比較考量しながら議論する必要がある。

マイルド化されているとはいえ岡部センター長の話でも、従来型インフルエンザ絡みで我が国だけで昨年1万5000人も亡くなっていると推計されているそうである。環境中に幾らでもいるインフルエンザウイルスの内、たまたま引っ掛かった茨城株だけにうつつを抜かしているのは、鶏の犠牲と財政面の負担それに労力と、文字通り労して効なしと思わざるを得ない。そして誰もそれを止められないでエスカレートして行く、本当はとても怖いことである。

H 17 12 19. I,SHINOHARA.