「AI不活化ワクチンの役割」「メキシコにおけるトリインフルエンザ最新情報」の論文を拝見しました。 メキシコでは1993年秋、LPAIが発生し1994年12月HPAIに変化、H5N2と同定され罹患鶏の全頭処分後、1995年、すみやかに不活化ワクチンが認可されバイオセキュリティを強化してワクチンを用いることにより同年6月以後HPAIの発生はなく、LPAIの抑制、根絶が可能であるとしていますが、この間に注目すべきは、庭先タイプの家禽生産者においてトリインフルエンザ陽性の総ての身近な鳥が殺処分された事ですが、2002年NBIシンポジウム後も順調であることを物語っています。 アメリカの方はNBIと同じ高度のバイオセキュリティを基本にワクチンの有効性が結論として述べられて居ることは、NBIシンポジウムと同様ですね。 一番の興味は人間のインフルエンザに変異する可能性が今日本で一番さわがれている、鶏飼いとしてはむしろ埒外の問題ですが、とても分かりやすくて皆の参考になると思いました。つまりワクチンに反対する学者がよく口にするワクチンをすると変異を促進するという理屈です。 これについてこう解説しています。 「インフルエンザウイルスは既存の免疫系を迂回するために変化を遂げ新たな流行を開始する。通常AIは免疫されていない鶏群に起こるので上記現象は家禽には認められて居ないが、一旦免疫を受けると変異する可能性がある」というもので、どうしても撲滅が望ましい意味が分かりますが、たとえHPAIを処分して押さえても、LPAIを摘発し続けるのは実際的でなく、現実にはLPAIがHPAI化するのをワクチンが防いでいるのなら、免疫を受けて変化する可能性は否定出来ないにしても、コントロール出来るだけ自然毒よりましな訳です。 それに何よりもそれによって確実に家禽の発症が防げて、将来的にはLPAIも根絶可能となれば、ワクチン使用を躊躇する理由は無い訳ですが理論的には使うことによって野生のウイルスが増幅して疫学的状況をあいまいにする可能性があるとか、MPAIが変異してHPAIになる可能性も指摘されてはいるものの、現実のワクチン使用ではその例はなく杞憂の範囲を出て居ないことが分かります。 また変異に対する免疫についてはH5,H7に対し、それ以外のHタイプ不活化ワクチン使用についても普遍的でないにしても広く受け入れられている、としているのはむしろ驚きです。そして一見どの国も殺処分を優先しているように見えるものの、やはりワクチンはあくまで予防措置であることから、予め発生を防ぐことが何よりも大切なことと思います。いままでの国の例のように遠い国での発生でしたら、予めのワクチンは無理で殺処分が優先することはやむをえませんが、今の我が国のように一度発生をみて、しかも周辺国の状況から判断したらもうワクチンでの防御は一刻もはやくなされるべきと思います。 普段の考え方からすればワクチンは二次的防衛線でも、緊急且つ重大な局面では第一線で備えるべきであると思います。散々痛い目にあった香港も遂に防圧に成功したと朝日が報じましたが、その経過をなぞるのでなく、いち早くその結果を戴くことが大切だと考えますが、いずれにしても我が国の現状に鑑みてものすごく示唆に富んだ内容で、これら実際にIAを体験した国々では、その根絶を期しながらも最終的にはMPAIもしくはLPAIに対しバイオセキュリティと不活化ワクチンで十分コントロール出来て居る事実と、我が国のように鶏の病気として捕らえる前に、いきなり最終的な、ヒトのインフルエンザへの変異を全面に出して居る国なんてないということ、皆その可能性は示唆しながらも実際の対策はNDとさして変わらぬこと、ここが実は一番大切なところで、この違いは明らかに、我が国の研究者の研究の方向によるもので、繰り返すように外国ではまだ杞憂する段階なのにいきなり明日にでも変化すると言わんばかりの日本の研究者のもとで、当の養鶏業者がなす術もなく佇立しているのはやはりこの人たちの責任だと思います。 最初からNDと同じだよといえば、現場はまだ過去の経験もありワクチンさえあれば充分対抗出来るのに、いきなり外国では杞憂の段階が全面に押し出された結果、政府と少なくとも現段階では、おかしな研究者のもと(将来的にその研究が評価されるのは間違いないにしても)明らかにおかしな方向に進んでいるのはもう間違い有りません。 アメリカの論文など政治的、経済的、臨床的、あらゆる面から比較検証しているのに、日本の研究者は自分の研究にこだわるだけで、ちっとも具体的に先に進まない、全くおそまつきわまりなく恥ずかしい限りです。過去NDなどは立派に制圧してきた我が国がAIに関しては、アメリカにくらべて我々がみても10年は遅れていると見ざるを得ないほど遅れた原因はもう明らかです。もう我説を捨ててAI先進国に学ぶべきです。 外国ではもうこれほど進んで居るのに、いまだに交差免疫はないと言い張り、今度はそのワクチンの備蓄を認め、続発を見てから緊急に使うというような、周囲の状況を顧みない独りよがりさ、もう研究室にお戻り下さいと叫びたいのは私だけでしょうか。 今日は資料を戴いた御礼をいう積もりでしたが、あまりの研究内容の違い、比較検討すら出来ない我が国研究者の貧弱さにあきれる思いです。 |