鳥インフルエンザ問題の今後(114)



今日のテレビニュースで自民党の武部幹事長が<ビルの強度偽装事件>を取り上げて「皆が悪者探しばかりをやっていたらこの業界が駄目になり経済にも影響する」と指摘した。まさに闇ワク疑惑に明け暮れる養鶏業界そのままの話である。

陽性鶏の殺処分を免れて居るウインドウレス養鶏場の困惑振りを聞いた。永い監視期間を経て、もう大丈夫とほっとした途端にそれまで陰性だったものが、急に陽転したり、ウイルスが出たりして廃鶏処分が出来なくなり、予定された補充雛は育成舎内で行き場を失い、殺処分を願い出る始末だと云う。監視の為、予定された産卵期間を過ぎた採算の取れぬ鶏も監視期間中は給餌を義務付けられている。にっちもさっちも行かないのだ。

これらを受けて茨城県が国に弱毒型に対しての方針転換を求めたその答えが、まるっきり実現不可能な解放鶏舎での殺処分回避案である。その条件が満たせぬ場合は、養鶏場が悪いのだと切って捨てて居るようなものである。茨城はお取りつぶし(鶏潰し)が現実になった。こうなったら鶏を置いて逐電するよりなさそうである。

話は戻るが発症もしておらずウイルスも居ないと家保と動衛研の検査によって認められた弱毒型陽性鶏群の場合は、天下の悪法《清浄国論》の前でも、せめて処理場送りくらいは許して貰えないとどうにもなるまい。それを「ウイルスが隠れて居るかもしれない」などと検査結果を否定する見解を示して、処分を禁止して監視するなどと言い出すからにっちもさっちも行かなくなるのである。何度も云うとおり隠れて居るウイルスが居るなら、かえって河岡委員の云うとおり「確実に強毒化」するのを待つようなものではないか。

とにかく喜田委員長のやることは矛盾だらけだ。摘発の為の全国サーベイランスをやるなら少なくとも家保の検査結果は絶対視しなければ信用されない。それを更に長期間、鶏群を閉じ込めて監視させたり、茨城県33例目森屋農場の場合のように平気で家保の検査結果を覆したりする。やられるほうはたまったものではない。

大槻委員の鶏卵肉情報誌へのコメントを見ても茨城県だけは検査抗原が違うことをはっきり述べている。大体、彼ら自身が自然株、特にH5N1強毒型とは縁もゆかりもないと認めて居るグアテマラ株(茨城株)を使うこと自体が偽ワクの犯人捜し目的以外の何物でもなく、本来の防疫にはまるきり役には立たないことははっきりしている。奇しくも冒頭の武部警告がそのままあてはまる。この混乱の責任は重大である。

それにしても、ここへ来て分からぬのは各地方の対策協議会の在り方である。茨城での混乱振りを他山の石とするでもなく一口にサーベイランスの強化などと簡単に云うが、これを全国に拡げたら強毒型の侵入を待つまでもなく、現状のままでも間違いなく養鶏業界は壊滅する。もう風評被害だけを恐れて居る段階ではない。マスコミにも正しい認識を持って貰う努力をしたうえで協力してもらう以外ない。正しい情報を積極的に伝えるべきだ。

茨城の苦境を誰も理解しておらず声が通らない点では霞ケ浦の鯉の場合よりもひどいと思うくらいだ。

H 17 11 27. I,SHINOHARA.
No.16924