鶏飼い時事(じじい)…『茨城32例目以降についての考察』



もはや小委員会や感染路究明チームの検討会の結果に期待を寄せる者など皆無だ。極論すれば彼らは能無しに等しい。茨城は見捨てられたも同然である。
要するに32例目以降も水平感染は起きておらず清浄化は保たれているから心配するなということらしい。何とも間の抜けた結論で、今後の対策についても実効が期待出来るものは何一つない。唯一紙とりあげた農業新聞も見出しの「弱毒性鳥インフルエンザ 解放鶏舎での殺処分せず」は大ウソで、その条件とするネズミの入れない鶏舎などウインドウレスでも有り得ない。まるで実効性のないことを平気で口にするマヤカシに過ぎない。

さて茨城32例目以降は、それまで監視下に置かれ、繰り返し抗体、ウイルス検査が行われて来た農場で履歴がはっきりしていることから、それ以前の例と切り離して考えるべきである。その中で、キミシマファームの場合の瑕疵が、わざとらしく大々的に取り上げられ、さもそれが原因であるかのような取り上げ方をされ、あまつさえ県警による事務所の捜索など誰の目にも闇ワク捜査を連想させる不可解な印象を与えることまで付加され皆の視線を本質からそらさせる結果となった。

しかし少なくとも他の全ての事例で指針違反などの瑕疵はなく、喜田教授の不可解なコメント(26日の家保検査での陰性結果を否定するかのごとき)があったものの、何れも近々までの調査で陰性結果のものばかりであった。それが森屋農場の一例(県内33例、総体34例目)を除き、何れもウイルスなしの陽転である。これ故にこそ委員会も国も闇ワクを疑ったのであり、一部にウイルスを見つけて不完全な偽ワク疑惑を持ち上げたのである。

残念ながら業界にとっても、この不可解さは同様であり、疑心暗鬼もあって積極的に反論出来ず、ただ闇ワクの使用など倫理的にも有り得ぬと私たちが反対しただけだった。そして今回32例目以降を特定することで、この感染の仕方が自然のものであると明白になった。

しかし何故ウイルスなしで陽転するのか闇ワクでっちあげのもとになったメカニズムは解明されていないが、ただこのような陽転がワクチン接種以外で起こることだけは事実として証明された訳で、委員会とチームがそのことに頬かむりしているのは如何にも許せない。理屈とすればワクチン以外で、陰性のものがいきなりウイルス感染もないまま陽転することは有り得ない。しかし事実を事実として捉えるなら、発症なしのウイルス発見は技術的にほとんど不可能に近いと言えそうであり現時点ではそれを認めてもらう以外ない。とすると発症も無く、ウイルスも見つけることが出来ない、陽転鶏を3カ月も鶏舎内に閉じ込めておくのは不合理である。特定の処理場で監視下で処分出来る自由を養鶏業者に与えるべきである。

鶏の経済寿命は一年である。育種自体その方向で行われている。育成中の基礎免疫の多くが半年位で低下して来て後は惰性である。従ってAIワクチンが半年しか効かなくても通常それで充分なのである。従って鶏の入れ替えは事あるごとに行われ、その都度、鶏舎内の浄化が計られる。今の日本の現状では環境中のウイルスは全く考慮されず鶏舎内の清浄化だけが要求されているが、鶏を長期間、鶏舎内に閉じ込めて置くことは、新陳代謝と浄化が遅れ、経済的にも無論だが、疾病予防の面から最も危険な行為であると云える。採卵養鶏では抗菌剤は一切使えない。しかし生き物であるから人間と同じで風邪も引く。一年の経済寿命で一カ月も風邪を引き産卵が低下すれば、その鶏群はもはや採算が取れず処分の憂き目にあう。治療されることは一切無くそれらすべての疾病の予兆が産卵低下であり、その段階で通常は淘汰されて鶏舎はカラになる。これで浄化が保たれるわけだ。

事実、監視下農場付近に、新規にヒナが導入された気配がない。繰り返すが、たとえ陽性鶏でなくても、長期間鶏を閉じ込めて置くことは腸内に例えれば、悪玉菌をふやすことになり、その間全く浄化が計れないことになり、危険なばかりか経済的にも成り立たない。意地の悪い見方をすれば、ことさら河岡教授の云う強毒変異を待って居るようなものである。

検討会では茨城での清浄化は保たれて居る(安心な状態)とするが、付近の解放鶏舎など、まるで虫食い状態ではないか。それらを見て、検討会の方針を聞くとき、茨城、いや日本の養鶏は完全に見放されたと思うのは私だけだろうか。今のような弱毒株の陽転鶏を残して置いたら、事は長期間解決しない。なぜなら実際はワクチン以外、ウイルスの居ない陽転など有り得ないからである。にも係わらずウイルスが見つからないのなら、廃鶏処分を許すべきだ。特に最近の事例では陽転鶏の割合が少ない。陰性時点を基準に考えれば、感染の拡がりはむしろこれからだといえそうだ。

しかし、兎にも角にも茨城32例目以降によって ウイルスが見つからぬままの急速な陽転現象も、ワクチンのせいではないことだけははっきりした。このことは事実と認めて小委員会の人たちも感染経路究明チームも腹を切るべきである。でなければ分かるように説明してほしい。官側の言いがかりで混乱の元になったニセワク疑惑への知らん顔の半兵衛は無責任だと思うよ。

H 17 11 25. I,SHINOHARA.
No.16890-16891