鳥インフルエンザ問題の今後(112)



いま騒がれて居る<耐震強度偽造事件>報道をみると、設計士や検査機関などの紙の上の問題だけで、肝心の現場の経験や技術、良心といった実際的なものはスッポリ抜け落ちて居る感じだ。建物が大きくなると現場の感覚などは役に立たなくなってしまうのか。養鶏もそれが生かせるのは、せいぜい二階建て建築くらいまでなのかも知れない。伝統的な数寄屋大工、宮大工的感覚はビル建設などには通用しないのだろう。養鶏も全く同じ感じがする。

タミフルもこれまでの製造販売分の七割以上を、既に日本で消費しているというのに、いざ国や地方で備蓄しようとすると経済的にも大問題だ。そんなことなら人間に影響しないことなどはっきりして居る茨城の殺処分をやめて、それでタミフルを買ったらどうか。同じ経済問題でありながら、莫大な費用を問題にもせず鶏は殺し続けるくせに、わずかばかりの薬を備えるのが大問題とする感覚はどうも分からない。事の是非はともかく、既に民間に流通しているものに殊更手を出して混乱させるのはおかしい。

子供にとってインフルエンザで怖いのはインフルエンザ脳症である。注射投薬等によるアナフィラキシーショックもある。それらをすべてタミフル投与と結び付けられると、医者も大変だ。怖い夢を見るのはアマンタジンも同じだった。すべからく薬を飲んだら幻覚などにも注意し、させるのは当然といえるとうちの医者も云う。「血圧が急激に下がったら危険だ。アドレナリンの皮下注射がうまく出来ない医者もいるぞ」そのほうが問題である。

茨城の殺処分は当然のことながら泥沼の様相を呈して来た。カナダあたりの報道にもあるように、発症をしないだけで、人、動物、鳥それぞれのインフルエンザウイルス自体は環境中にうようよしているのは確かだろう。ガンカモ類の消化管に何万年も住み着いて排泄され続けているのだから当然だ。日本での調査でも野生の猪で80%もの陽性率だった。鶏の場合は経済寿命も短く、人間の風邪引きと同じで軽い呼吸器病の発生は日常茶飯事とあってさして問題にもされず、表面的に見つからないで来ただけである。それを学者達が次期パンデミックと引っかけて殊更遺伝子再集合による危険な変異を強調した為、普段なら何でもない茨城のような事例を解決不能な泥沼に引きずり込んでしまった。

これは、昨年の79年振りと称される我が国でのHPAIのたまたまの発生と、学者のLPAIの危険な変異説が結び付いて、養鶏場自身もすっかり洗脳された結果である。症状も出さないような風邪くらいで100万羽以上の鶏を淘汰する異常さを、日常人間の場合と同じ鶏の風邪症状に、薬ひとつ使わずに頑張って来た鶏飼いの経験にもかかわらず黙って受け入れるのみか、かえって確たる基準も分からぬまま自主的に強化しようとする更なる異常さを、遅きに失っしたといえこの辺でくい止めないと、繰り返すように症状も出さない環境中のウイルス陽性くらいで殺戮しまくった愚行は後世までの語り種になってしまう。実際、今考えたって馬鹿げたことに違いない。

今の世界の情勢からしても、せめてHPAI発症をみてから淘汰するくらいのところまで頭を冷やして、このトラウマ状態から抜けだそうではないか。河岡教授の「放って置いたら、確実に強毒化していた」とする学者のウソッパチで目を覚ますべきだ。二度と学者に騙されない為にも。

H 17 11 22. I,SHINOHARA.
No.16839