鳥インフルエンザ問題の今後(110)



入りたくない部署は?と聞かれたら「茨城県畜産課」と答えると揶揄されるほど御難続きである。実際には、イセに云えることがなんで農水に云えぬというほうが無理で、地方農政にとっての国は限りなく大きな政府である。国に楯突いたら地方はやっていけない。その困難な中、実際は茨城の畜産課は本当によく頑張って居る。イセのHPに対するクレームは血を吐くような本音の部分と受け取れる。

たびたび取り上げる34例目、森屋農場の事例では、驚くべき短期間の変化にも「県の検査の精度の問題ではない」とはっきり喜田発言(10月26日以前の感染も有り得る)に反論すべきで、事実その事例を特定こそしないがマスコミに対して一鶏舎10羽の検体抜き取りで全体に対する精度は問題ないと説明してきていた。であるからこそキミシマファームの事では厳しい態度をとらざるを得なかったと思う。

ところが昨日、県知事が自らそれを覆した。何をか云わんやである。またマスコミは無定見にそれに飛びつき、方針転換とまで報じた。いったいどう収拾をつける気なのか。当初、水海道の初発が片付き、喜田教授もこれで続発はないとした後、二次発生が起こった。地元紙は県の意向を受けて殺処分はなさそうだと報じ、県も直ちに其の事を国に訴えた。たびたび云うが、その線ならば今日の事態は避けられたはずである。

初発のアレバメントカントウの場合はEDの繰り返しの追求から偶然発見された結果である。検出が困難で特定出来ぬままの訳の分からぬ怪しげな事例は97年に家衛試が全国調査の結果、東北以西に広く分布するとして以来続いていたことでもあった。何よりまずかったのは今回のものが弱毒とはいえH5亜型で、世界の基準92/40ECにもない我が国独自の、今にして思えば誰かが考えた甚だ不都合な<弱毒タイプ強病原性>というような省令によるとかの分類に引っかかってしまったことである。

確かに強毒への変異はイタリアでカプアさんが問題にしたり、河岡教授がペンシルバニアで体験したとはいうものの、日本では古来、鳥からの風邪、肺炎を問題にしたことは無かった。研究者達のおかげでインフルエンザウイルスの自然宿主はガンカモ類だと分かったが、カモ捕り権ベエの昔からカモはネギカモというくらい御馳走だった。皇室の行事にも鴨猟があったくらいで、こんなに騒がれ出した今だって白鳥や鴨を危険視する庶民は少ない。その彼らは、あらゆる弱毒型のウイルスを古来持って居た訳で、鴨を食ったら肺炎になったなどの言い伝えは一切無かったしそれが本来の自然なすがたである。

その中で問題にされたのが家禽ペストだった。その呼び名が高病原性鳥インフルエンザに変わったが、やはり92/40のように鴨などと共存している弱毒株とははっきり一線を画して置くのが本当で、それこそが人知だったのだ。それと人間に取り付けるようになるまでは、あくまでも鳥の病気であるとの認識も同時に大切である。家禽の場合もワクチンでコントロールしないのなら変異した段階で処分するのがやはり正しいと思う。今の茨城の型などほとんど鴨に寄生しているものに等しく、これを殺して居たらきりがない。(冬に向けて症状が出るかどうかの懸念はその時の話だ)その辺のことを広い視野で捉えて根本から考えていくのが小委員会の役割だろう。

繰り返すが茨城県の当初の姿勢は正しかったと思う。ただ省令の中身から見て、国との対立は十分予想出来た。だから前任時代の知事が、宜しく頼むとにこやかに時の農水大臣をたずねて握手した時から現在の事態を予測できたとするのは穿ち過ぎか。

H 17 11 18. I,SHINOHARA.