鳥インフルエンザ問題の今後(109)



放って置けば確実に強毒に変異したとして、河岡教授のように明かにうそをついてまで恐怖心をあおり、H5と名が付くからと症状も出さない弱毒株を淘汰し続ける方向を更に強化しようなどとは正気の沙汰でない。

現場の感覚からすれば、1996年の岩手、鹿児島での発症を受けて、翌97年に家衛試でまとめられた全国調査の結果からも、人、特に豚、猪の調査でわかった高い陽性率からも、LPAIの浸潤は鶏の場合もあるものと思って来たが、民間の調査で無症状の鳥などから陽性のそれを見つける困難さを聞き及んでも来たし、実際、昨年のカラスでの各地方の調査と動衛検でのそれとを比較して、そのあまりの差に技術的にも摘発目的の全国的サーベイランスは無理であり無用な混乱を招くだけで、現にそれに成功した国など皆無であることを指摘して反対したわけである。

確かに隣国や東南アジア諸国の危機的状況を察知すれば、国や行政が国民の健康の為に危険な農産物の輸入を阻止する必要から、厳重に国内を律しようとするのはBSEをみても分かる。しかしそれが同時に国内産業を危機的な状況に追い込み、国民にとっても過大な経済負担と食糧危機を招き兼ねないとすれば行き過ぎも甚だしい。

特に許し難いのは、些細な瑕疵を針小棒大に取り上げて、全ての責任をそれに負い被せようとする行政当局のやり方と昨日の毎日朝刊に見られるようなマスコミの取り上げ方である。おかげで今朝は多くの客が「OO養鶏は悪い奴だね」というようになった。去年の浅田農産の時と全く変わらない。これは日本の恥ずべき国民性と思いたくなる。

水海道での陽性例以前に韓国でH9N2による広範囲の汚染で、その陽性率は40%との噂もあり、日本でも他にED症候が多発していた関係で、発症のないまま迂闊に淘汰を強行すればとんでもない方向に発展する予感は現場とすればあったわけである。

もともと国際間で基準としてきた92/40ECもLPAIに対する取り決めはない。それを放置したことがカプア博士の反省点とされた。しかしこの数年間、特にH5N1の大発生で事態は一変し、最近ではどの国もLPAI対策どころではなくなってしまった。

これまではすべからく自然界の弱毒株が家禽に取り付き変異を繰り返し強毒化することだけが云われてきたが、渡り鳥の強毒そのままの保毒、それに先のアメリカでのスペイン風邪ウイルスの復元以来、強毒型の直接の発症をもっともおそれるようになった。

その意味では陽転とは発症予防の手段である。同時にそのことは強毒株の発見を困難にし潜在的流行を促して危険だとされ、それがワクチン反対の論拠だったが、今となっては直接の発症の危険性はウイルスの爆発的増殖から比較にならない脅威ととられている。

目下の喫緊の課題は、我が国の唱えるところのウイルスの撲滅どころか、猖獗を極める当面の危険な相手であるH5N1ウイルスを環境中からどうやって減らしていくかということにかかっている。

我が国で摘発を続ける無症状でウイルスが出ない陽転鶏はワクチンによるものだとする予断が国側にはある。そこからウイルスが見つかれば今度は偽ワクチンだ。条文の趣旨からも遮二無二それへ結びつけようとあがく。それが自然界にあることは一切認めようとしない。今回の混乱のもとはそこにある。要するに学者の不勉強を現場に押し付け、瑕疵を見つけては悪者に仕立て上げ、マスコミに垂れ流しているだけなのだ。不勉強と云う点ではそのマスコミも同様である。

さて、繰り返すが34例目、森屋農場のほうをどう説明するのか、喜田教授(小委員会)のように26日以前に感染していたなどと公式の検査の精度のせいにするなら、殺された鶏も、飼い主も浮かばれぬだけではすまされない。でなければ目の前の事実を認めて感染経路究明チームともども潔くシャッポをぬぎなさい。本当に信頼を損なって居るのは国と小委員会など学者の皆さんですよ。

H 17 11 16. I,SHINOHARA.
No.16729