先日のジュネーブでの鳥フル対策国際会議でも発言されたように「未だこれは鳥における流行病に過ぎない(Chan said the WHO)」のであり、「鳥における流行を制御することが、人の間で拡がってくることを防止するために、最も有効な方法だ」とFAOの獣医部門の責任者Joseph Domenechも指摘したし、OIEの長官も度々同じことを述べて居るように、我が国も厚生労働省が対策を立てる前に、肝心の農水省がしっかりしてくれなくてはどうにもならないのに、自縄自縛の偽ワク騒ぎで、にっちもさっちもいかないとはどうしたことか。あんなボタンの掛け違えに何時迄も拘って居たら本当に有効で必要な対策は立てられっこないことは最初からはっきりしている。 ウイルスにも明らかに時の勢いというものがある。現在のH5N1がそれである。もはや仮想敵国をつくってあれこれ注意を散漫させている事態ではない。 平時ならば、変異を考えればどの亜型も危険と言えよう。サイレントエピデミックも問題かも知れない。しかし今こそは攻めて来ようとする当面の敵を撃破することに集中しなければならない。いつも云うが敵の敵は味方である。自然界でH5N1の勢いを止める勢力があれば、それがH9N2であれH5N2であれ味方につけて競合排除させなくてはなるまい。その際、不自由ならば《清浄国論》も捨てることだ。その覚悟を示してこそ真の対策といえるのではないだろうか。 こんな時に、偽ワクだとか、愚にもつかないことでの告発だとか、それにも増して、味方の大量虐殺など正直馬鹿じゃなかろうかと思える。 そのことを抜きにしても本当に備えねばならぬ敵をそっちのけにして、官側と業界の味方同士が不信感をつのらせ協力関係を壊してかかって、これで戦に勝てるとでも思うのだろうか。 かつては、家禽にとってそれぞれの地域でH5N2もH9N2も強敵だった。H1N1のスペイン風邪のごときは直接人間に大被害を及ぼした。しかし幸い今ではそのどれもがマイルド化している。今をときめくH5N1だっていずれはおとなしくなる時が来るだろう。その時、いまはおとなしいその他の亜型がまた襲いかかってくるだろうが、少なくとも今の強敵はH5N1を置いて外にない。 河岡教授のクローズアップ現代での発言にはがっかりした。それも茨城のウインドウレス内の実態も見ずに「(解放型の)殺処分がなければ強毒化は間違いなかった」と言い切って見せたのである。確かに撲滅したわけではないが、今、1983年のペンシルバニアでのH5N2の突発を茨城にあてはめるのは、ナチスの復活を宣言したようなものではないか。 私自身、一鶏飼いとして、お上やその道の権威たちに、楯突いたり貶したりするつもりは毛頭なかった。しかしこの有り様はさすがに看過できないのだ。掛け違えのボタンを潔く外した上で、本当に時局にマッチした対策を考えてもらいたい。 H 17 11 14. I,SHINOHARA. No.16684 |