鶏飼い時事(じじい)…『NHKクローズアップ現代 謎の感染・鳥インフルエンザ』



一口に云って一方的も甚だしい悪質な偏向番組である。とりわけ悪質なのは、茨城の鶏大量虐殺を「あのまま放って置いたら間違いなく強毒に変異していた」と一般国民の恐怖感をあおる形で事実に反する断定をして、国の行為を有無を云わさず肯定していること。もう一つは養鶏業者の声とやらと怪しげな風聞を元にして、鶏飼い達が生活の為なら闇ワクチンを受け入れて当然とするような無責任な闇ワクチン論を展開したことである。

「殺さなかったら間違いなく強毒に変異していた」と河岡氏は断定したが、実際は解放鶏舎の鶏こそ殺されたがウインドウレス鶏舎の陽性鶏、数百万羽は卵を産み続けて、半年経った今も閉じ込められたままである。殺すも地獄、生かしておくも地獄とはこの事だ。茨城の養鶏家達の計り知れない犠牲の上に、生かされて居るこれらの鶏は、しかしあの虐殺が本当に必要だったかどうかの、貴重な生き証拠だ。それを見つめて居る我々の前でよくも事実に反した白々しいことが言えたもので学者の無責任さ丸出しではないか。
我々が一番問題にしたいのは今も未だ続いて居る150万羽を越える無症状の鶏の虐殺の当否についてである。しかるに国側はその議論を避け、責任を回避するために御用学者を総動員し、こともあろうに偽ワクのでっちあげまでやらかしたのである。

今回のジュネーブ会議でもウイルスの根絶というような妄想を捨てて動物の段階でいかにコントロールするかが議論されている時に、我が国のやり方は異常である。繰り返すように国はこの議論を避け、虐殺行為を正当化するためにあえて偽ワクチン論を展開し、弱毒株の強毒への変異を殊更強調して国民を欺いて来た。

コメンテーターの学者達が云うように生活を守る為に偽ワクチンを求める馬鹿な鶏飼いが今の日本に居るわけがない。そんなことをしたらそれこそ信用は台なしとなり社会から抹殺されてしまう。更に、彼らの云う通りなら残された数百万羽の鶏は、とっくに強毒化していることになる。まだ一年は経って居ないと強弁するならもう半年様子を見ようではないか。それほどの確信があったら何故全部殺さなかったのだ。全てに痛みを感じない学者達は今もウインドレス鶏舎に閉じ込められたまま呻吟している数百万羽の鶏と、殺す以上の苦しみを味わって居る飼い主達のことなどとうに忘れて居るのである。
更に我が国に存在しない中米型だと一様に驚いて見せるが、そんなものが入り込む余地は無数に有ることはこれまで繰り返し検証し述べて来た通りである。

今世界中で弱毒株が強毒に変異するとして、無反省に鶏を片っ端から殺す経済的余裕のある国などそんなに有るはずが無い。日本はそれほど裕福なのか、困っているのは富山県だけなのか。
それに強毒だけを意識して居て、弱毒は初めての体験だったといいかげんな事をいうが1996年以来の事例をもう忘れてしまったのだろうか。北海道の家保のページではまだちゃんと当時の家衛試の資料が使われて居た。関心がなく不勉強なのは学者達のほうだ。

弱毒株はなにもH5N2だけではない。危険というならすべて危険だが、今皆が騒いで居るのはアメリカで復元されたスペイン風邪のH1N1と構造が似て居るというH5N1強毒株の突発とその後のパンデミックだ。日本だけは未だに二言目にはウイルスの絶滅絶滅というが、世界中が差し迫った事態に直面していて、もう何処の国もそんな戯言を云っている暇はない。火星の大接近で昔の新聞投書を思い出す。「まだ吉田内閣か? 火星人」というものだったが、そっくりそのまま「まだ清浄国論? 火星人」である。

繰り返すように学者達にとって鶏飼いとは、法律などおかまいなしに生活しているクズみたいな生き物と写って居るらしい。その底辺の生活を守る為には、むしろ無責任な彼らハイソサエティとは比較にならぬくらい相手の信用が大事なのだ。法律で禁止されているワクチンなどに手を出したらどんなことになるか考えただけでも恐ろしいことである。

とまれ、あんな怪しげなワクチン話を積み上げて検証ひとつせず、また無責任な学者達の事実と異なる一方的な話だけで誘導して、本当に必要な議論を避けようとする、ここまでの国のやりかたと無定見に見え透いたプロパガンダを繰り返す"国営放送"は全く許せないと思う。この問題を真剣に考えて居る者達にとって、検証一つする事なく、全く事実に反する御用学者達の言葉を並べただけのこの番組は、人を小馬鹿にしているだけでなく、国民の誤解を更に深める恐ろしい効果をもつ番組と言える。国を危うくする番組である。

H 17 11 8夜 篠原 一郎