『鳥インフルエンザ問題の今後(105)』



感染研に届いた鳥インフルエンザにやられた東南アジアの子供の写真標本がテレビ放映され「これはインフルエンザとは言えない。まるでエボラ出血熱だ」と云う驚きのコメントが聞かれ、岡部センター長の「鳥小屋を覗くような馬鹿な真似はするな」との談話が新聞に出て、もうやがて2年になる。だが国段階での現実の対策は何も出来て居ない。全く不思議な感じだ。今年は人型のインフルエンザワクチンも必要量の半分しかない。タミフルも世界的に不足してきたこれから備蓄するのだとか。備蓄もないのに耐性菌の心配だけはしている、変な国だ。

この間(かん)、我が国の学者達はウイルスの変異や潜在的流行の危険性ばかりを強調して国民を欺いて来た。一番危険なのはH5N1HPAIそのものである筈だ。中でもウイルスが爆発的に増えるのは発症時である。まず家禽での発症を如何にして押さえるかが最大の命題だったことは論を待つまでもない。そしてその為に一番有効である家禽へのワクチン接種を拒み続けて来たのである。

鳥のインフルエンザでありながら、例え稀なことではあっても人間にエボラ出血熱に似た多臓器不全の激烈な症状を示す、この最初の驚きは今も続いて居る。だから鶏飼い現場とすれば、危険な鶏の発症はどうしても防がなくてはならない。発症させての殺処分は一番身近かな従業員や可愛い孫達に最初に危険を及ぼす。だからアマンタジン、タミフルを十分用意して廃業も宣言したうえでワクチン運動をやったのである。

それにしてもこの10月5日のProMEDメールでのスペイン風邪ウイルスの復元記事の内容は衝撃を新たにした。
結論的にはスペイン風邪のH1N1ストレーンは,後の1957年アジア風邪、1968年のホンコン風邪ウイルスのように、よく云われる鳥インフルエンザウイルスから2〜3の重要な遺伝子を取得した、人型のインフルエンザウイルスによって起こされたパンデミックではなくて、完全に人のなかの機能に順応した鳥インフルエンザウイルスであったと信じるとしたうえで、今回のH5N1がそのスペイン風邪ウイルスに似て居り、3種のRNAポリメラーゼとそれを動かす宿主因子の働きの違いで、細胞内環境が変わりウイルスとレセプターの相互作用以外にウイルスの感受性が決定されそうだとの我が国での研究(国立遺伝学研究所)とも相俟って、なおさら鶏段階での突発防止の重要性が増したように思われたのである。

そしてこれが事実だとすれば繰り返すように、2次的なmutation(変異)を防ぐ従来の国と現場の考えを改めて、兎にも角にも一次の突発を防ぐことに全力を挙げるべきである。それにはワクチン接種こそが効果的である。しかし今更それが許可されても、とても全国をカバー出来る量が確保されるのは難しい。ウインドウレスは徹底した隔離と消毒で、解放ケージは初発の一羽の発見とその周囲の淘汰で、放し飼いはまた徹底したフィードバックで、それぞれが最善と思う方法を取ってみるよりないだろう。

H 17 10 27. I,SHINOHARA.